全面侵攻してきたロシアに対する戦争で、従来の有人装備の代わりに効果的で低コストの無人装備を活用しているウクライナは、ドローン(無人機)戦争の先導役になっている。ウクライナ軍は攻撃用の航空戦力が不足しているが、自爆型ドローンによってロシアの石油・ガス施設に大きな被害をもたらしている。ウクライナ軍は伝統的な海軍戦力もほとんど持たないが、水上ドローン(無人艇)でロシアの軍艦を数隻撃沈し、ロシア側による黒海の港の海上封鎖を解いている。そして、ウクライナ軍の爆薬を積んだFPV(1人称視点)ドローンは、戦場の形を変えている。
空中ドローンに比べると地上ロボットは難易度が高い。だが、ウクライナの技術者たちは創造的なソリューションを見いだしている。
無人地上車両
軍用ロボットは一般的に遠隔で操作され「無人地上車両(UGV)」などが知られる。UGVの歴史は意外と古く、ソ連で開発され、1939〜40年のフィンランド侵攻(冬戦争)に投入された「テレタンク」にさかのぼる。テレタンクは旧式の軽戦車に原始的な無線制御システムを取り付けたもので、カメラがなかったため操縦士は戦車が見えるところにいなければならなかった。主な武装は火炎放射機で、ほかの手段では危険すぎて近づけないような要塞に対する攻撃に使うことが想定されていた。しかし、実戦では信頼性が低く、試験的な運用は数カ月で打ち切られた。第二次大戦中、ドイツ軍は超小型の無人戦車「ゴリアテ(ドイツ語ではゴリアト)」を配備した。連合軍ではtracked mine(装軌地雷)と呼ばれたゴリアテは60kgの爆薬を搭載し、自爆攻撃に用いられた。ドイツ軍はテレタンクで問題になった無線干渉や信号消失を警戒したため、ゴリアテは長いワイヤーを通じて操作する仕様だった。数千両が製造されたものの、やはり実戦には役立たなかった。速度が遅く、立ち往生しがちで、制御ワイヤーが断線して操作不能に陥ることも多かったからだ。