欧州

2024.03.18

ウクライナ軍、7tの改造自爆ドローンを再び使用 越境インフラ攻撃に投入か

屋外展示されているTu-141無人偵察機。2020年8月、ロシア西部ヤロスラブリで(Maykova Galina / Shutterstock.com)

ウクライナはロシア領内深くの軍事目標や産業目標の攻撃に使える兵器を見つけ出そうと、冷戦時代の古い兵器の在庫をさらに渉猟しているようだ。

1970年代に旧ソ連で開発されたツポレフTu-141/143偵察ドローン(無人機)の追加の在庫を、どこかで誰かがどうにか見つけたらしい。Tu-141やTu-143は簡素で大きくて不格好なドローンながら、使い方次第では有効な攻撃兵器になる。ウクライナ軍はこれまでも、旧ソ連軍で40年前に退役したこれらのドローンを攻撃用に改造して使っており、1年ほど前にも使用が確認されていた。

ソーシャルメディアのユーザーは最近、ウクライナと国境を接するロシア西部ブリャンスク州で撮影されたとされるTu-143の残骸の写真を新たに取り上げている。ウクライナ側はこのところ、ウクライナに近いロシア領内の石油施設などのインフラ狙った遠距離攻撃作戦を続けており、このTu-143もそれに用いられたもようだ。

ジェット推進式のTu-141やTu-143は、ベトナム戦争で米空軍が実戦投入した機材などが該当する第1世代の偵察ドローンの発展型であり、あまり洗練されていない。

とはいえ、シンプルなつくりでかなりのスピードが出て、重量7t、全長14mと数百kgの弾頭を運べるほど大きい。そのため攻撃に転用すれば、たとえばロシア軍が用いている重量200kgのシャヘド攻撃ドローンのウクライナ側の模倣品よりも、はるかに大きな破壊力をもつ。

つまり、Tu-141/143は有効に使うことができる。ウクライナ側がロシアの石油精製施設などを爆破する自爆任務に使っているらしいのも、驚くには当たらないだろう。

ドローンの歴史は第一次世界大戦にさかのぼり、最初は射撃訓練で無線操縦の標的として使われた。1950年代、米空軍とカリフォルニア州にあった標的メーカー、ライアン・エアロノーティカル社は、当時としては非常に高度な慣性航行システムを採用し、機首に多数のカメラを搭載したドローンを開発した。全長約9mでジェット推進式の「ライアン・モデル147」である。

ベトナム戦争に投入されたモデル147は、ベトナム上空で何千回も任務飛行を行い、有人の爆撃機による空爆に先だって地上目標の写真を撮影した。ベトナム戦争が終結した頃には攻撃用バージョンも開発されていたが、その後、モデル147のプロジェクトは突然打ち切りになった。

米空軍に続いてソ連空軍も同様のドローンを就役させた。ツポレフ社が開発したTu-141/143は、1974年に初飛行している。同社はウクライナ東部ハルキウの工場で、傾斜のついた発射装置から発射されるTu-141を142機製造した。この機種は1989年まで現役だった。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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