とりわけ重要なのは、このサプライズ援助にM39「ATACMS」地対地ミサイルの第2弾が含まれることだ。これについては政治専門サイトのポリティコが最初に報じた。
M39の第1弾は昨年秋にウクライナに届いていた。ウクライナ軍は入手するとすぐ、装輪式の高機動ロケット砲システム(HIMARS)や装軌式の多連装ロケットシステム(MLRS)からM39を発射し、ロシア軍の防空システムやヘリコプターに大きな損害を与えた。20発かそこらだったとみられるこの供与分は短期間で使い尽くした。
M39は重量2t、全長4mの弾道ミサイルで、1990年代に開発された。950発のM74子弾を内蔵する弾頭や固体ロケットモーターを搭載し、ウクライナ軍に三十数基あるHIMARSからは1発ずつ、二十数基あるMLRSからは1度に2発発射される。慣性誘導で目標まで導かれ、射程は160kmほどに達する。
M39は通常、照準点からだいたい45m内の範囲に着弾する。現代の基準に照らせば命中精度はものすごく高いとは言えないが、このミサイルが「面」を攻撃する地域制圧兵器(エリアウェポン)であることを考えれば、十分な精度ということになる。
M39は目標に向かって急降下していくにつれて、ぐるぐると回転して散開し、鋼鉄とタングステンでできたM74子弾950個が最大数千平方mにまき散らされる。各子弾は手榴弾並みの爆発力がある。
つまりM39は、広がって配置され、防備の薄い軟目標(ソフトターゲット)に対する攻撃で強力な威力を発揮する兵器だ。実際、ウクライナ軍も昨年、長射程の防空システムや、前線の基地に駐機していたヘリコプターなど、破壊しやすい目標の攻撃に使った。
昨年10月17日にあったウクライナ軍によるATACMSでの最初の攻撃では、ロシア軍の占領下にあるウクライナ南部と東部のヘリコプター基地が目標に据えられた。南部ザポリージャ州ベルジャンシクの郊外と東部ルハンシク州の飛行場2カ所に、M39が少なくとも計3発撃ち込まれた。
OSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストのGeoConfirmed(@GeoConfirmed)は商用衛星画像を分析した結果として、M39の子弾によってロシア軍のヘリコプター21機が撃破されるか激しく損傷したとX(旧ツイッター)で報告している。「戦争の開始以来、ロシア空軍にとっておそらく最大の打撃になった」ともコメントしている。
ウクライナのOSINT分析グループであるフロンテリジェンス・インサイトも、この攻撃によるロシア側の損害について同様の評価をしている。