欧州

2024.03.11

ロシア軍がパトリオット発射機を初めて撃破 ウクライナにとって深刻な損害に

パトリオット地対空ミサイルシステム。2013年1月、トルコ南部カフラマンマラシュで(mehmet ali poyraz / Shutterstock.com)

ロシア軍のドローン(無人機)操縦士の執念と幸運のたまものだった。9日かその前日、この操縦士はウクライナ東部ドネツク州ポクロウシクの郊外でウクライナ軍の車列を発見した。それには、パトリオット地対空ミサイルシステムの4連装発射機を載せたトレーラー少なくとも2両が含まれていた。

ロシア軍の9К720イスカンデル短距離弾道ミサイルの運用部隊は、普段よりも迅速に対応したようだ。もしかすると数百km離れた地点から、ウクライナ軍の車列に狙いを定め、イスカンデルを発射した。それは車列を直撃し、パトリオット発射機の車両とみられる2両が爆発した。その要員もほぼ確実に死亡した。

ロシアがウクライナで拡大して2年あまりたつ戦争で、ロシア軍がパトリオットシステムを見つけ出し、その一部を撃破したのは初めてだ。ロシア側にとっては、これ以上ないほど重要なタイミングでの戦果になった。

ウクライナ側は先月下旬から今月初めにかけて、ロシア空軍のSu-34戦闘爆撃機を12機撃墜し、ロシア側の航空優勢を減じていた。一連の撃墜にはパトリオットも関わっていたとみられる。

前線から30km強離れた場所でイスカンデルを撃ち込まれたパトリオットの発射機や要員は、これらのスホーイの多くを撃ち落とした発射機や要員だったのかもしれない。今回の撃破によって、ウクライナ東部の上空はロシア側にとって格段に安全になった可能性がある。

一方、ウクライナ軍の防空部隊は動揺しているはずだ。空軍隷下の同部隊は、レーダーやおそらく4~8基の発射機などで構成されるパトリオットシステムをわずか3基しか保有しておらず、予備の発射機も4基しかない。パトリオットシステム3基はドイツ(2基)と米国(1基)から、予備の発射機4基はドイツとオランダ(それぞれ2基)から供与されたものだ。

ウクライナ側は1度の攻撃によって、保有するパトリオット発射機の最大13%ほどを失った可能性がある。各システムが発射機を8両配備されている場合は7%の損失ということになる。

パトリオットの移動式発射機やレーダー、射撃管制装置、ミサイル再装填装置は、ウクライナの最も優れた防空システムを構成する重要な装備である。パトリオットのPAC-2ミサイルは、これまでにロシア軍機数十機を撃墜した可能性があるほか、ウクライナ側の主張どおりなら数百にのぼるドローンやミサイルも撃ち落としてきた。PAC-2の射程は最大約145kmある。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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