欧州

2024.03.13

電波妨害のきかない「光ファイバードローン」をロシア軍が使用 その実力は?

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ロシアのカラシニコフグループ傘下のドローン(無人機)メーカーであるザラは、新型クワッドコプター「イズデリエ55」について、無線通信に対するあらゆるジャミング(電波妨害)に耐えられると売り込んでいた。しかしこれは、同社が以前に紹介していたのとあまり変わらない自律性のことだったようだ。

一方、最近鹵獲されたロシア軍のFPV(1人称視点)攻撃ドローンは、ジャミングを克服するためにかなり変わった、じつに驚くべき技術を用いていた。このドローンは無線通信機器を搭載せず、代わりに光ファイバーケーブルが接続されていたのだ。光ファイバーはドローンが飛行すると伸びていき、操縦士はそれを通じて有線でドローンと通信する仕組みだった。

謎装置の正体

問題のドローンはウクライナの軍事ブロガー「セルヒィヤ・フレッシュ」(@serhii_flash)が今月初め、通信アプリ「テレグラム」のチャンネルで報告した。その奇妙なドローンは通常の弾頭のほかに、中に正体不明の装置が入ったプラスチック製容器を積んでいた。セルヒィヤはチャンネルの読者に、誰かこれが何かわかる人はいないかと尋ねた。

数日後、彼は正体が判明したと投稿した。ウクライナの専門家がドローンを分解して調べたところ、謎の装置は光ファイバーケーブルが巻かれたスプール(巻き枠)だった。光ファイバーケーブルは高速通信に使われる中国製の市販品の光トランシーバーとつながっていた。ケーブルの長さは10.8kmほどあったという。

セルヒィヤは驚いたが、心底驚いたというわけではなかったらしい。彼はこう付記している。

「(ウクライナ)国防省のハッカソンで、この技術(光ファイバー)を無人航空機に採用してはどうかと提案した参加者がいた。だが、わたし自身もほかの審査員も現実的でないように思えた。10kmの光ファイバーケーブルを空中で切らずにほどいていきながら、はたしてドローンは飛べるものだろうかと」

コメント欄にも多くの人から同様の驚きの声が寄せられ、うまくいくようには思えないという意見が多かった。とはいえ、有線式の誘導には長い伝統があるのも確かだ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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