欧州

2024.03.13 09:00

電波妨害のきかない「光ファイバードローン」をロシア軍が使用 その実力は?

有線誘導ミサイル

米国がウクライナに供与した兵器の1つに、BGM-71 TOW(トウ)対戦車ミサイルがある。ウクライナに数千発提供されたのは、TOW2という1970年から米軍で使用されている旧型だ。TOWは「Tube-launched, Optically tracked, Wire-guided(発射筒発射・光学追尾・有線誘導)」の頭文字をとったもので、有線誘導というのは2本の銅製ワイヤーを通じてミサイルが目標に導かれることを意味する。ワイヤーはミサイルが飛んでいくと伸びていき、ミサイルの射程はワイヤーの長さ(約3.8km)に制限される。

TOWで有線誘導が採用されたのは、以前の対戦車ミサイルに採用されていた無線誘導は妨害に対して脆弱すぎると判断されたからだった。

銅製ワイヤーではミサイルの制御信号しか伝送されない。しかし光ファイバーの登場によって、ミサイルから射手に映像信号を送り返すのに十分な帯域幅を持つ高度な有線誘導を開発できるようになった。このコンセプトに基づいて米国で1980年代に開発が進められたのが「強化型光ファイバー誘導ミサイル(EFOGM)」である。EFOGMでは射手がミサイルの視点から目標を見ることができるので、見通し線外の目標も攻撃できる。EFOGMを搭載した軽装車両は、遠距離の敵装甲車両を破壊できるとされていた。

最終的には、赤外線誘導のFGM-148ジャベリン対戦車ミサイルやレーザー誘導のAGM-114ヘルファイア空対地ミサイルとの競争によってEFOG-Mの開発は放棄され、光ファイバー誘導のほかの多くのプロジェクトもほとんど進展しなかった。光ファイバー誘導ミサイルは発射テストで示されたように機能したのだが、ほかに選択肢があったということだ。欧州で開発されていた光ファイバー誘導方式で長射程のポリフェム地対空ミサイルも、やはり打ち切りになった。

光ファイバー経由のドローン制御

光ファイバーはミサイルだけではなく、ドローンでの活用も探られた。米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)は2000年代初め「近接戦闘殺傷性偵察兵器」プログラムのもと、炸薬弾頭を搭載した自爆ドローンを開発した。

DARPAはこのドローンについて「市街地で個々の兵士が見通し線外の目標を攻撃するのに適した携行式・発射筒発射・光ファイバー誘導・徘徊型の弾薬だ。(中略)この誘導弾薬は従来よりも大幅に広い進入経路から目標を攻撃できるだろう。たとえば、地形や建物の特徴によっては最大10区画の距離で、建物の上を越えたり角を曲がったりしながら目標に向かうことができる」と説明している。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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