新たな期が始まり環境がタイミングは、社会人が自らの働き方やキャリアを見つめ直す機会でもある。特に4、5月は、3月に退職した者の引き継ぎや新入社員の登場が重なる時期であり、職場環境に大きな変化が生じやすい。このような状況の下、社会人は「退職」に対してどのような不満や不安を感じているのだろうか。
調査機関「Job総研」は、20〜50代の社会人を対象に「退職に関するリアル」についての調査を行なった。
1498件もの声が集まった本調査によれば、社会人の71.0%が「退職」に関する不満や不安を持った経験があると回答。その割合は50代で最も高い84.8%となっており、年代が上がるにつれ不満・不安を持った経験が多数となる結果になった。
この結果は、多くの社会人が何らかの形で退職という選択肢や、それに関連する感情に直面していることを示唆している。

退職に対する具体的な不満として、まず挙げられるのが「引き継ぎに対する不満」だ。年度末の繁忙期に退職と引き継ぎが重なり有給休暇を十分に取得できなかったという声や、退職者が適当な引き継ぎを行い、上司のフォローもないまま残された者が苦労したという事例、さらには引き継ぎを途中で放棄し連絡が取れなくなるという少々身勝手なケースも報告されている。
退職代行に対して不満と羨望の声も
また、近年増加している「退職代行に関する不満」も無視できない。退職代行を利用すること自体に納得がいかないという意見や、利用すること自体は理解できるとしても、世話になった同僚や先輩への挨拶もせずに退職することへの不満はやはり多いようだ。その一方で、自身の退職時に上司と揉めた経験から、退職代行の存在をうらやむむ声もあり、退職を取り巻く状況の変化を感じさせる結果となっている。
さらに、「新人に関する不満」も退職に関連して語られている。入社間もない新卒社員が結婚などで早期に退職することに対する教育コストの無駄を指摘する声や、休暇明けに突然退職代行を利用して退職するケースへの驚きと疑問の声が上がっている。
身近な人の退職は、自分のキャリアを考えるきっかけに
加えて、知り合いの退職が自身のキャリアに及ぼす影響も大きいことが明らかになった。調査では、社会人の74.0%が「知り合いの退職で『自分はこのままでいいのか』悩んだ経験」があると回答しており、こちらも50代が85.0%と最も高い割合を示している。

同僚や先輩、同期といった身近な人物の退職は、自身のキャリアを改めて考えるきっかけとなるようだ。「置いて行かれている感じがする」「新しい環境に飛び込む人と自分の成長を比べてしまう」「慕っている上司や先輩が退職すると自分も退職を考えてしまう」といった声がある。また、「入社から3年以内に退職した同期の年収が上がったのを見て、若いうちに自分もチャレンジすべきか焦った」という焦りや後悔を感じたという声もあったが、「自分の市場価値や成長度合いが気になる」といった前向きな今後につながる意見もあった。
春は多くの社会人にとって不満や不安の季節のようだ。身近な人の「退職」は小さな出来事だが、多くの個人、職場そして社会全体の意識にも影響を与えている。