欧州

2024.03.13 09:00

電波妨害のきかない「光ファイバードローン」をロシア軍が使用 その実力は?

安井克至
光ファイバー誘導は最終的に放棄されて無線制御が採用されたが、このドローンに関連するほかの技術の多くは米エアロヴァイロンメント社のスイッチブレード300無人攻撃機に流れ込んでいる。この殺傷性徘徊型兵器も米国からウクライナに供与され、ウクライナ軍で使用されている。

光ファイバーを通じてドローンを制御する技術はすでに存在するものの、非常にニッチな分野で市販品での採用は広がっていない。ただ、米オレゴン州の光ファイバー専門企業ティンバーコンは、ドローン制御のための光ファイバーソリューションも提供している。

ロシアのソリューション

鹵獲されたロシア軍のドローンに関して興味深い点は、それが軍の研究所が開発したものではなく、市販の部品を使ってドローンを開発しているロシアの小規模なグループによって製造されたものらしいことだ。ロシアにはこうしたグループが数多くあり、赤外線カメラを搭載したドローンや数週間後に起動する「冬眠ドローン」、長距離通信中継用のドローンなど、さまざまなドローンを開発している。こうした取り組みは以前はソ連式の官僚主義に阻まれていたが、現在は物事をもっとスピーディーに進められるようになっているのかもしれない。

光ファイバーのスプールと光トランシーバーを積むと、ドローンの重量はおそらく1kg前後重くなり、その分、搭載できる弾頭はかなり小型になる。半面、光ファイバー誘導方式には非常に大きなメリットがある。光ファイバー通信は探知できず、妨害もできないのだ。ロシア側もウクライナ側も、ドローンを効果的に飛ばせるかはジャミングやそれへの対抗に大きく左右されるだけに、これは重要な能力である。

ウクライナとロシア以外の国も無縁ではない。テロリストなど悪意ある者によるドローンの使用に対抗するため西側諸国で採用されている対ドローンシステムは、ほとんどがジャミングやスプーフィング(なりすまし)、無線信号への干渉に頼っている。誰でもガレージで光ファイバードローンを製造できるようになれば、ドローンの脅威はさらに深刻になるだろう。

セルヒィヤによれば「敵(ロシア)に遅れをとらないように、この制御技術の検証をすでにウクライナの専門家に依頼している」とのことだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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