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2024.03.05

ドローン軍拡競争 新たな世界大戦の引き金となる恐れも

ウクライナ・ハルキウ州で2024年2月9日、ロシアのドローン攻撃で爆発・炎上するインフラ設備(Hnat Holyk for Gwara Media/Global Images Ukraine via Getty Images)

近年起こった3つの戦争は、21世紀の戦場におけるドローン(無人機)の活用例をまざまざと見せつけた。

イエメンでは反政府武装組織フーシ派とこれを支援するイランがサウジアラビアの石油インフラや軍施設を攻撃し、イランとサウジ連合軍との代理戦争が2015年から膠着状態に陥っている。アゼルバイジャンは2020年と23年のアルメニアとの戦争で、大量のドローンを使用した。ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻して以降は、ドローンが主役の戦闘映像がインターネット上にあふれている。

トルコのバイカル社製ドローン「バイラクタル」を賞賛するウクライナ兵士の歌は、ロシア軍の装甲車両が次々と撃破される中で拡散された。ロシア側もイラン製ドローンの大群を投入し、ウクライナの民間インフラを攻撃した。

最近の戦争においてドローンが中心的な役割を担っている事実は、すでに西側メディアの間に危険な偽りのナラティブ(語り)を生み出している。ドローンは西側の軍事的優位性を強固にする新たなハイテクガジェットにすぎないという「神話」だ。これは間違っている。

ドローンは単なるガジェットではないし、安価で、変革的で、普遍的な存在だ。従来の戦争のかたちを激変させる革新的なテクノロジーであり、ドクトリン(戦闘教義)と補給の再編成を迫っている。それは、必ずしも西側に有利なものではない。ドローンをめぐる駆け引きは今まさに進行中なのだ。

米軍が2000年代初頭にアフガニスタンとイラクの戦争でドローン爆撃を多用し始めたことが「ドローン神話」の基礎を築いた。米陸軍戦略大学の2013年の研究など、神話がささやかれ始めた当初に異を唱える専門家の指摘はあったが、俗説が広まるのを阻止するほどではなかった。

だが、ドローンが戦略的に活用された初の戦争は、アゼルバイジャンとアルメニアが戦った2020年のナゴルノ・カラバフ紛争である。アルメニアにはロシア製の兵器が大量にあったが、アゼルバイジャンに完敗した。アゼルバイジャンに勝利をもたらしたのは、時代遅れの旧ソ連製装備を自国内で改造したことと、イスラエルの航空・防衛大手イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)製のドローン「オービター1K」と「ハロップ」を導入したことだ。

米軍は現在、アゼルバイジャンが開発したドローン戦術を研究している
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翻訳・編集=荻原藤緒

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