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2024.03.05 09:00

ドローン軍拡競争 新たな世界大戦の引き金となる恐れも

ウクライナ・ハルキウ州で2024年2月9日、ロシアのドローン攻撃で爆発・炎上するインフラ設備(Hnat Holyk for Gwara Media/Global Images Ukraine via Getty Images)

ほとんどすべての事例で、比較的安価なドローンの投入が攻撃を補助している。安価なため、弱い立場の当事者が実力以上の相手に張り合う手段たりえるのだ。これをリアルタイムで実地検証しているのはウクライナ軍だけではない。西側諸国やその提携相手を攻撃しているフーシ派など、イランの支援を受ける民兵組織も含まれる。
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ドローン戦の戦略的有用性は、諸兵科連合作戦の一角を担って戦場で敵を圧倒するのみならず、防衛側に耐えがたいほどの戦費負担を強いる点にもある。米国の防空システムはあらゆるミサイルやドローンを撃ち落とせる無敵さを誇るが、迎撃ミサイル設備1基にかかる費用は、ミサイル本体を除いて400万ドル(約6億円)にもなる。安いドローンなら1機1000ドル(約15万円)もしない。

米海軍がイエメンにあるフーシ派のドローン基地を攻撃する際の主要兵器であるトマホーク・ミサイルは、1発の発射コストが400万ドルだ。ゆえにこそ、トマホーク製造元の米防衛大手レイセオンでさえ、はるかに安価なドローン迎撃技術「コヨーテ」に多額の投資を行っているのである。

ドローンは「戦略的均衡化装置」なのだ。規模の比較的小さな行動主体が、かつてないほど容易に敵に財政負担を押しつけられるようになった。極貧にあえぐ北朝鮮でも国産ドローンを製造でき、軍事アナリストの懸念を呼んでいる。
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ドローンはまた、軍需産業の従来の生産スケジュールを破壊し再定義する。米軍の需要を満たせる生産システムの構築に米国が苦労しているのは、主に生産工程の長さが原因だ。一方、ドローンは迅速に生産できる。米国がトマホーク・ミサイルの不足に直面する中、イランはドローン輸出を急拡大させている。

世界中のドローン製造業者が量産体制に入っている。スウェーデンの航空・防衛大手サーブは、クウェートなど海中の機雷を懸念する国々に水中ドローンを輸出している。世界の軍事用ドローン生産は2016年比で2倍以上に増加しており、2030年までに現状比でさらに倍増すると予測されている

ドローン攻撃は、失敗した場合でも攻撃側に有利な不確実性をもたらしうる。現在、紅海で商業船舶を標的としているイラン製ドローンの大群による攻撃は、ほとんどが意図した目標に命中していない。むしろ、商業船舶をおびやかして紅海を迂回させ、航行管理上の困難と物流のボトルネックを生み出すことが主な効果となっている。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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