ロシアがウクライナで拡大して3年2カ月半たつ戦争の前線の両側で毎日、何千機も徘徊している小さな自爆ドローン(無人機)の脅威が、装甲車両とその乗員を地下に追いやっている。
最近ソーシャルメディアに出回った動画には、1100kmにおよぶ前線のどこかで、ウクライナ軍の乗員4人の2S1グボズジーカ122mm自走榴弾砲が地下掩蔽(えんぺい)部から出てくる様子が映っている。動画をシェアしたアナリストのRoyは、地下掩蔽部で過ごすウクライナ軍砲兵の写真も再掲している。
A Ukrainian 2S1 "Gvozdika" (Carnation) 122mm self propelled gun has a dugout so deep it struggles to get out for a fire mission.
— Roy🇨🇦 (@GrandpaRoy2) May 7, 2025
It is great to see the strong anti-FPV protective netting temporarily pulled aside at the entrance. https://t.co/W1rQ2mZavN pic.twitter.com/EW7TwWMcDr
動画の地下掩蔽部はどう見ても重機を使って掘られたもので、入口のあたりは丸太で覆われ、ロシア軍のドローンを絡め取るための分厚いネットも見える。地下の陣地はかなり深いらしく、重量約16tで装軌式の2S1は射撃任務のため這い上がって出ていくのにいささか苦労している。
ウクライナ軍の砲兵部隊が地下に潜り込んでいるのには理由がある。ウクライナ軍は爆弾を搭載したFPV(一人称視点)ドローンを毎月20万機程度使用し、ロシア軍も同じくらいの数のFPVドローンを投入している。重量わずか1.5kg前後のこうしたドローンは、車両を損傷させたり人員を殺害したりする威力のある爆弾を装着して、無線通信あるいは光ファイバーによる有線通信で数km先まで操縦して飛ばすことができる。
ジャーナリストで研究者のデービッド・キリチェンコは昨年9月、米首都ワシントンにあるシンクタンク、欧州政策分析センター(CEPA)に寄せた論考のなかで「ウクライナの陣地上空はそれ自体が常時戦場である」と書き、こう続けていた。「敵味方のドローンが空域を飛び交い、重装甲車両や大砲のような高価値目標を探し回っている。このように上空からつけ回されるために、戦車の戦術は根本的に変わった」
同じことは砲兵の戦術についても言えるだろう。
兵士も車両も地中へ
重火力車両は、敵に向けて射撃を行う間以外はますます身を隠すようになっている。キリチェンコはこれを「慎重な戦車の時代」と呼んでいる。乗員にとって、状況は月を追うごとに悪化している。論考の発表から8カ月後、キリチェンコは「いまではもっと慎重になっていると言えるだろう」と記している。