米海軍の「悪夢」を現実にしたウクライナ無人艇群の軍艦撃沈

紅海でフーシ派のミサイルが迫り、近接対空システムの使用を余儀なくされた米海軍のミサイル駆逐艦「グレーブリー」。2022年6月、英ポーツマス沖で(Kevin Shipp / Shutterstock.com)

ウクライナ国防省の情報総局が先週、クリミア西部で水上ドローン(無人艇)によってロシア海軍のコルベット「イワノベツ」を撃沈したとする動画を公開した。ウクライナによるこの戦果は、米海軍の対ドローン(無人機)防衛のリスクや、ドローンによる攻撃の可能性を高めるものでもある。

ウクライナはロシア黒海艦隊の艦艇を次々に破壊し、ウクライナ南部の港に寄せ付けないことにある程度成功している。その結果、ウクライナ南部からアフリカやその他の地域に向けて出港できる穀物輸送船が増え、収入源となる穀物輸出を回復させている。

ウクライナ側がロシアの艦艇を水上ドローンのような非対称的な手段でさらに撃沈したり、深刻な損傷を与えたりすれば、ロシアは水上艦を危険にさらすのをますます嫌がるようになるかもしれない。

AP通信によると、ロシア当局は今回の攻撃について確認もコメントもしていない。英国の海上警備会社アンブリーは、通常300kgの爆薬を積む水上ドローン最大6隻が攻撃に使われたと分析している(編集注:情報総局のキリロ・ブダノウ局長はのちに、攻撃には「マグラV5」と呼ぶ水上ドローンを複数用い、6隻がイワノベツに直撃したとメディアに語っている)。

情報総局は声明で、イワノベツは「移動が不可能になるほどの損傷を受けた」とし、それによってロシアはおよそ6000万〜7000万ドル(約89億〜100億円)の損害を被ったと主張している。

その主張が正しさはさておき、6隻あるいはそれ以上の水上ドローン群によって、それよりも桁外れに高価な艦艇が撃沈あるいは無力化されることは、現実に起こり得る。米海軍もこの問題を認識していることは、各艦艇に中距離防御システムや近接防御システムを搭載していることや、大量の水上ドローンの取得を計画していることから明らかだ。

目立たぬながら、米海軍は2021年にドローン問題への対処策として、米ノースロップ・グラマン製の対ドローン電子戦システム「DRAKE」をすべての水上艦に導入している。フリゲートから航空母艦まで、米国の軍艦はこのほか、レーダー誘導方式のファランクス近接防御火器システム(CIWS)を以前から装備している。

ファランクスは、自動で毎分最大4500発射し、有効射程約3.7kmとされる20mm機関砲などから成る。CNNによると、米海軍のミサイル駆逐艦「グレーブリー」は先月末、イエメンの反政府勢力フーシ派が紅海に向けて発射したミサイルを、自艦まで「1マイル(1海里=約1.85km)以内に迫ったところで」ファランクスによって撃墜している。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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