宇宙

2025.05.07 11:30

「かんむり座T星」の新星爆発に備えよ、NASAが夜空での位置確認を呼びかけ

かんむり座とかんむり座T星(Shutterstock.com)

かんむり座とかんむり座T星(Shutterstock.com)

まもなく起こる「一生に一度」の天文現象を見逃さないよう、今のうちに夜空のどこを見ればよいか確かめておこう──米航空宇宙局(NASA)が5月の星空情報ブログで、観測のコツを紹介している。

その天文現象とは「かんむり座T星(T CrB)」の新星爆発だ。英語で「Blaze Star(火炎星)」の異名をとるこの星は、2025年中に爆発を起こして通常の1000倍もの輝きを放ち、1946年以来初めて肉眼で見えるようになるとみられている。

かんむり座T星の普段の明るさは10等級と暗く、肉眼では到底見えない。だが、新星爆発による増光時には北極星と同じ2等級まで明るくなる。こうした激しい変光現象を伴う近接連星系を「激変星」と呼ぶが、かんむり座T星は一定の間隔で白色矮星が爆発現象を繰りかえす「再帰新星」でもある。かんむり座T星の爆発周期は約80年で、前回の爆発が1946年だったことから、もういつ爆発してもおかしくないのだ。

天文学者たちは2023年にかんむり座T星で新星爆発の予兆となる減光を確認し、2024年4月から9月の間に爆発すると予測した。しかし、それは起こらなかった。その後、今年3月27日に新星爆発が起こるとの予測が発表されたが、この日も何事もなく過ぎた。

かんむり座T星は太陽系から約3000光年離れている。爆発すれば、数日間は肉眼で見えるようになる。

かんむり座と、かんむり座T星の新星爆発が観測されるとみられる位置(矢印)を示した星図(NASA/JPL-Caltech)
かんむり座と、かんむり座T星の新星爆発が観測されるとみられる位置(矢印)を示した星図(NASA/JPL-Caltech)

かんむり座T星の見つけ方

たとえ新星爆発が起こっても、かんむり座T星が夜空のどこにあるのかを知らなければ「一生に一度」の感動は得られない。NASAで広報を担当するプレストン・ダイクスは、5月の星空情報を紹介する記事でこの点を指摘し、かんむり座T星の探し方を星図とともに紹介している。

かんむり座T星は、かんむり座という星座の中にある暗い星だ。「北の王冠」の呼び名を持つかんむり座は、7つの星が半円形に弧を描いて並んでいる星座で、北半球なら夜空に簡単に見つけることができる。

「かんむり座は2つの明るい星、アルクトゥルスとベガの中間にある。北斗七星の『ひしゃくの柄』を手掛かりにすると、ちょうどその場所が見つかる」とダイクスは記している。「新星爆発が起こる前に、月明かりの影響のない晴れた夜を選んで、その位置を確かめておいてほしい。そうすれば、新星が突如出現したときに比較ができる」

ダイクスは、5月中に夜半前の東の空でかんむり座を見つける練習をしておくことを勧めている。

うしかい座の1等星アルクトゥルス、こと座の1等星ベガ、その中間に位置するかんむり座、そして北斗七星の「ひしゃくの柄」の位置関係を示す星図(NASA/JPL-Caltech)
うしかい座の1等星アルクトゥルス、こと座の1等星ベガ、その中間に位置するかんむり座、そして北斗七星の「ひしゃくの柄」の位置関係を示す星図(NASA/JPL-Caltech)

かんむり座T星はなぜ爆発を繰り返す?

かんむり座T星は、赤色巨星と白色矮星からなる連星系天体だ。白色矮星はエネルギーを使い果たした恒星の残骸で、熱を放出しながら徐々に冷えていく。一方、赤色巨星は老化して膨張し表面温度が下がった星で、外層から水素などの物質を放出している。

赤色巨星が放出した物質は、白色矮星の表面に引き寄せられ、降り積もっていく。降着物質が一定量に達すると白色矮星は熱核爆発を起こし、これが劇的な明るさの増大を生む。

かんむり座T星と同様の赤色巨星と白色矮星の連星系の新星爆発を描いたアニメーション画像(NASA/Goddard Space Flight Center)
かんむり座T星と同様の赤色巨星と白色矮星の連星系の新星爆発を描いたアニメーション画像(NASA/Goddard Space Flight Center)

NASAによると、爆発の影響がおよぶ範囲は白色矮星の表面に降着した物質のみにとどまり、白色矮星の本体は無傷のまま残っている。このため、新星爆発のプロセスが何度も繰り返されるのだという。

forbes.com原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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