経済・社会

2024.02.10 09:00

米海軍の「悪夢」を現実にしたウクライナ無人艇群の軍艦撃沈

紅海でフーシ派のミサイルが迫り、近接対空システムの使用を余儀なくされた米海軍のミサイル駆逐艦「グレーブリー」。2022年6月、英ポーツマス沖で(Kevin Shipp / Shutterstock.com)

米海軍はドローンや水上ドローンの脅威に対処するために、レーザーや高出力マイクロ波(HPM)を目標に直接照射する「指向性エネルギー兵器」の実験プロジェクトも加速している。米海軍の艦艇は20年以上前からペルシャ湾や紅海で無人艇や有人の小型ボートの脅威にさらされてきたが、比較的安価なドローン技術の技術を受けて対応を急ぐ必要に迫られている。
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米海軍は数年前から使い捨て水上ドローンの取得も望んできた。「PRIME」と呼ばれる最新の取り組みでは、自律型の海上阻止艇として活動する水上ドローンを月に10隻以上生産することが計画されている。米国防総省の国防イノベーション・ユニット(DIU)との共同プロジェクトであるPRIMEは、紅海やペルシャ湾で第5艦隊(司令部バーレーン)の状況把握能力を高めるのが目的と考えられる。

シンクタンクの米海軍協会(USNI)が運営するニュースサイト「USNIニューズ」の記事によれば、PRIMEにはまた別の動機もあるという。「中国による台湾侵攻を抑止するうえで鍵となり得る攻撃ドローン」を多数製造することだ。

海軍アナリストのブライアン・クラークはUSNIニューズに、PRIMEは「キネティック(動的)で殺傷力のある新しいUSV(水上ドローン)を実戦配備しようとする取り組み」だと述べ、これらの水上ドローンは台湾海峡を含む西太平洋での使用が想定されているとの見方を示している。
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この見方が正しいのかどうかは判断しかねるものの、ウクライナ情報総局の動画が告げているメッセージと合致するのは確かだ。小型で費用対効果の高い水上ドローンを戦術に見合った数投入すれば、主要な海軍アセットを寄せ付けないようにしたり、必要なら破壊したりできるということだ。

同じ記事によると、米海軍は太平洋で「ヘルスケープ(地獄絵図)」と名づけた構想の実験も密かに行っている。水陸両用作戦による台湾侵攻を攻撃型の無人機と無人艇の組み合わせで妨害する想定だという。USNIニューズは、この構想は「ウクライナによって開発され、市販の部品で製造された低コストで殺傷力のある水上ドローン」の登場が契機の1つになったと分析している。

もしそうだとすれば、ウクライナ情報総局の動画は、米海軍が内部でヘルスケープ構想を進めるのを後押しするものになったかもしれない。それは同時に、水上ドローンを含め、ドローンに対する最大の防御はドローンを大量に用いる効果的な攻撃だという、古典的な考え方を支持するものにもなっただろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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