サイエンス

2025.05.08 18:00

全長14mで体重1トン、史上最大の大蛇「ティタノボア」は何を食べていたのか

Dotted Yeti / Shutterstock.com

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アマゾン流域、川の浅瀬でとぐろを巻くオオアナコンダや、東南アジアの林床で体を伸ばすアミメニシキヘビを見たことがある人は、すでに世界最大級の現生のヘビとの遭遇を経験している。この2種の大蛇は、いずれもときに全長6mを超え、それぞれの生態系における頂点捕食者だ。だが、はるか昔に絶滅した近縁種は、これらを悠々と凌駕する巨体を誇った。

2009年、コロンビア北部のセレホン炭鉱で研究チームが発見したのは、度肝を抜かれるほど巨大で、もはや伝説上の生物にさえ思えるような古代のヘビの化石だった。ティタノボア・セレホネンシス(Titanoboa cerrejonensis)と命名されたこの先史時代のボアは、約5800万~6000万年前という、恐竜絶滅直後の時代に生きていた。推定全長13m弱、推定体重1トン超のティタノボアは、これまでに発見されたなかで最大のヘビだ(ただし、インドで発見された別種の先史時代のヘビも、サイズではいい勝負だったかもしれない)。

巨体だけでも話題をさらうには十分だが、科学者たちを本当に驚かせたのは、その生態と食性だった。

初期のボアであるティタノボアのとてつもない巨体は、高温気候と関わりが深い

ボア科のヘビは、概して大型で筋肉質だ。獲物に毒を注入する有毒種とは異なり(世界最長の毒ヘビの驚くべき「共食い」の生態についてはこちらの記事を参照)、ボアは「絞め殺し」戦術を使う。獲物に体を巻きつけて締め上げ、息の根を止めるのだ。じわじわと、静かに、残酷なまでに効率的に。

ボア科に含まれる種には、重量で世界一、全長では世界2位の現生種であるオオアナコンダや、科全体の代名詞となっているボアコンストリクター(学名:Boa constrictor)などがいる。ほとんどの種のボアは熱帯、特に南米と東南アジアの一部に分布する。体温と代謝が全面的に外気温に依存する変温動物にとって、高温多湿の環境は、巨大化するのに好都合だ。

ティタノボアがこのような途方もないサイズで生きていくためには、年間平均気温が一貫して摂氏30~34度である必要があった。この値は、暁新世の熱帯は、現代よりもはるかに高温だったという気候モデルの推定に一致する(当時は、大気中の二酸化炭素濃度が極めて高かったためこうした現象が起きたと推定されている)。

ティタノボアが発見されたセレホン層は、知られているかぎり、新熱帯区(南米大陸および中米のエリア)の雨林にある最古の化石産出地だ。ティタノボアのほかには、巨大なカメ、ワニに似た爬虫類、大型魚類の化石が発見されており、生命にあふれた湿潤な密林生態系の様子が鮮明に見て取れる。

生息環境や、一緒に発見された動物の化石に基づき、研究者たちは、ティタノボアは現代のアナコンダとよく似た生態をもち、半水生でほとんどの時間を水中で過ごしたのだろうと考えている。しかし、ある重要な点で、ティタノボアは型破りだった。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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