製品

2023.12.05

シリコンバレーの異端児が開発した「迎撃ドローン」の画期的性能

“Roadrunner-M”(C)ANDURIL

シリコンバレーの異端児として知られるパルマー・ラッキーが共同創業したAnduril Industries(アンドゥリル・インダストリーズ)は、21世紀のロッキード・マーティンになろうとしている。防衛テクノロジーのスタートアップである同社は、国防総省(ペンタゴン)の契約を待つのではなく、自らの資金でテクノロジーを開発することでそこに到達しようとしている。

南カリフォルニアを拠点とするアンドゥリルは11月24日、大型ドローンから有人機まで、さまざまな空中の脅威を迎撃するために設計された自律型のジェットエンジン搭載ドローンを発表した。同社によれば、このドローンは「名前を明かせない米国の顧客」からの受注を獲得しており、年間数百機のペースで生産を開始する予定という。

Roadrunner(ロードランナー)と呼ばれるこのドローンは、ネストと呼ばれる空調管理された箱から垂直に発射され、最高速度は音速に近い時速1100キロ近くに達するという。

この機体のオペレーターは、レーダーで捉えた脅威を評価するために、複数の機体の群れを派遣することができる。その脅威が敵対的な航空機であることが判明した場合、弾頭を装備したロードランナーが迎撃し、自爆攻撃を行う。誤報だった場合、ドローンは基地に戻り、次回のミッションに備えるために着陸する。

このドローンの価格は「数十万ドル台の前半」だと、饒舌なハイテク界の奇才のラッキーはビデオ会議で記者団に語った。「この機体は、これまで存在しなかったまったく新しいカテゴリーの兵器だ。再利用可能なミサイルと本格的な自律型ドローンの中間のような航空機だ」と彼は述べている。

ラッキーが昨年6月のフォーブスの取材で初めて大まかに説明したロードランナーは、小型クアッドコプターと弾道ミサイルの中間に位置する、新たなクラスの空中の脅威に対抗するために設計された。この種の脅威の例としては、ロシアがウクライナ戦争で使用中のイラン製神風ドローン「シャハド」が挙げられる。

アンドゥリルは、ロードランナーのスペックの公表を避けたが、類似の無人機と比較して、弾頭ペイロード容量が3倍、片道の有効射程距離が10倍、操縦性が3倍だと主張している。また、同社が自社開発したエンジンは「これまでに製造された中で最も出力密度の高いターボジェットエンジンだ」とラッキーは述べている。

さらにこの機体の強みは、1人のオペレーターが複数の機体を監督可能な点で、破壊指令を受けた機体は、自律的に飛行経路を決定し、迎撃コースを設定するという。ロードランナーを導入すれば、軍は高価な有人戦闘機のスクランブルに頼らずに、脅威を偵察できるとラッキーは説明した。
次ページ > 日本や台湾の空の防衛にも役立つ可能性

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事