インバウンド(訪日外国人観光客)の数を2030年には6000万人に増やそうと日本政府は目標を立てているが、今のままでは5000万人にも届かないという試算が公表された。しかし、適切に対応すれば理論的には7000万人を超えるという。それには何が必要なのか。
中国向けマーケティングサービスを展開するENJOY JAPANは、独自の方法で算出した「訪日潜在値指数」を公開した。これは、韓国、中国、台湾、香港、タイ、アメリカ、オーストラリアの7つの国と地域を対象にしたもので、日本と各地域の1人あたりのGDPと伸び率、訪日観光客数、訪日経験者の割合などを加味して、今後、それらの地域から日本にどれだけの観光客が来るかを予測するものだ。

国別訪日潜在値指数のグラフは、潜在的な訪日者の最大値を100とした現在の指数を示している。値が100に近いほど訪日者数が上限に近づいているため、少ない地域ほど「今後の伸びしろ」が大きいことになる。とくに、アメリカやオーストラリアからのインバウンドには大いに期待できるということだ。訪日潜在値指数から予測される2030年の最大値は7308万人と、政府の目標を大きく上回る。
だだしそれには条件がある。特定の人気エリアに人々が集中する状態の解消だ。まず日本への入口となる空港だが、現在は、羽田空港、成田空港、関西国際空港、福岡空港の4つに人気が集中している。これらの空港では滑走路の拡張などが計画されているものの、そのほかの地方空港のキャパシティーを拡大できなければ、2030年の訪日者数は5537万人に留まるという。

さらに宿泊施設の数や稼働率が現状のままなら、2030年の訪日者数は4980万人と、今とそう変わらない数にまで落ち込んでしまうとの予測だ。
宿泊施設に関しては、宿泊業界の人手不足が大きな課題だ。また、地方の魅力を発信してインバウンドを呼び込む工夫が重要だとENJOY JAPANは指摘する。そうしなければ、空港と宿泊施設を整備しても仏作って魂入れずとなってしまう。やれば目標を上回り、やらなければ下回る。もうやるしかないだろう。