あれは2020年だったから、パンデミック以前のことであったが、冬季のニセコ(北海道)に出かけたことがある。ホテルへ到着して最初に聞いた言葉は「Checking in?(チェックインしますか)」という英語であった。ほかに朝食を食べようとレストランへ出かけたら、列の前にいた老夫婦が「Table for Two?(おふたりですか)」と聞かれてマゴマゴしているシーンにも出くわした。なにしろそのホテルで日本人スタッフを見かけたのは、チェックアウト後に客室を清掃するパートと思われるご婦人たちだけであったのだから、ここは江戸時代の出島よろしく外国人居留区のようになっているのだなと印象的な体験だった。
このニセコ人気は2001年のアメリカ同時多発テロ事件の後、世界情勢を不安に思ったオーストラリア人観光客が欧米のスノーリゾートを避けて日本にやってきたのがきっかけだと言われている。最初は仕方なく日本へやってきたであろう彼らだが、日本の上質なパウダースノーに魅せられたに違いない。その後のニセコが多くの外国資本によって開発され、不動産バブルが起きたのは衆知の通りだ。世界的に知られているサンモリッツ(スイス)や、シャモニー(フランス)、アスペン(アメリカ)などと並ぶ一級のリゾートとして名を馳せるようになった。
ほかにも白馬村、野沢温泉村(ともに長野県)なども訪日外国人客から大いに人気を博しているが、その一方で、2023年12月に福島県会津に国内最大級のスキー場が誕生したことはまだあまり知られていない。南北に広がる国内最大級のスキー場「星野リゾート ネコマ マウンテン」とはどんなスノーリゾートだろうか。市町など地方の行政機関を巻き込み、世界へ発信する「AIZU SKI」の魅力とは何か——「星野リゾート ネコマ マウンテン」総支配人の森本剛氏に話を聞いた。
