ウクライナ空軍は、射程300kmほどのストームシャドー/SCALP-EG巡航ミサイルを発射するスホーイSu-24戦闘爆撃機を数機運用しているが、英仏から供与されたこれらのミサイルは不足しており、Su-24はロシア領内に数百km進入して空襲する危険な任務をさせるにはあまりに貴重すぎる。
代わりとしてTu-141/143に目が付けられたのは容易に想像できる。Tu-141/143の飛行スピードは時速約965kmと速く、モデル147と同じく高度は最高で約6100m、最低で木の上あたりを飛行できる。慣性航法システムのおかげで、1600km超の距離を計画のコースから数km内を保って移動できる。回収する場合は、エンジンを切り、パラシュートを開いて落下する仕組みだった。
カメラを取り外し、爆薬を積めば、Tu-141/143は偵察用ドローンから一種の巡航ミサイルに変身する。ウクライナ空軍がTu-141/143の一部を自爆任務用に改造したことは、すでに2022年3月に明らかになっていた。報道によれば、同月10日、コースを外れたTu-141がクロアチアに墜落し、機体には爆薬などが積まれていた痕跡があった。
ウクライナ側は2022年夏、ウクライナとの国境から約80km離れたロシア西部クルスク市内もしくはその周辺を攻撃するため、Tu-143少なくとも2機を送り込んだ。これらはロシア側の防空によって撃墜されている。だが同年12月5日には、ウクライナ側の改造ドローンはロシア軍の防空をついに破り、ウクライナとの国境から500km近く離れたロシア国内の爆撃基地2カ所を攻撃した。
ただ、それから2カ月後には、ウクライナ側は飛行可能なTu-141/143を使い尽くしたとみられていた。ロシアがウクライナに対する戦争を拡大した最初の1年間で、ウクライナのTu-141/143計14機が墜落するか撃墜されている。
ブリャンスク州で新たな残骸が確認されたことで、2023年2月に墜落したTu-141は飛行可能な最後の在庫ではなかったことが明らかになった。1年前と同じく現在も、ウクライナにTu-141/143があと何機残っているのかは不明だ。まだ残っていれば、ウクライナと国境を接するロシアの州の産業施設などを狙った遠距離攻撃は、今後さらに続くことになるだろう。
(forbes.com 原文)