欧州

2024.03.21 10:00

ウクライナが軍用地上ロボットを量産、戦場のゲームチェンジャーになるか

安井克至
米軍は長年、武装UGVの試験を行ってきたが、実戦で使用したことは一度もない。米キネティック社が開発した武装UGV「SWORDS/タロン」は2007年にイラク駐留米軍に配備されたものの、実際は使われなかった。一方、ロシア軍は2018年、シリアで戦闘用UGV「ウラン-9」を実戦投入しているが、使い物にならなかった。ここでも大きな課題は通信だった。

ドローンが戦場で広く使われるようになっているのに対して、地上ロボットの進歩は遅い。ドローンの飛行経路の設定に比べると、地上の自律走行は、標識などがはっきりある道路ですらまだ大きな課題がある。たいていのドローンは自動操縦で飛行し、空中で障害物の回避さえできるが、自動運転車は同じレベルに達しておらず、安全性の確保は引き続き難題になっている。

とはいえ、テクノロジーは急速に進化している。ウクライナは2022年2月にロシアの全面侵攻を受ける前からハイテク・スタートアップの拠点であり、ロボット工学や自動化の分野でも相当な専門技術がある。

ブレイブ1

ウクライナの産業界と国防部門の連携を促進するテクノロジーインキュベーター「ブレイブ1クラスター」は、複数の地上ロボットプロジェクトも進めている。ブレイブ1クラスターは新しいアイデアを募り、投資家やユーザー候補とマッチングするプラットフォームだ。これまでにUGVのコンセプトおよそ140件を検討し、うち50件を実戦さながらの戦闘条件でテストしたうえで14件を承認している。

ブレイブ1クラスターのナタリヤ・クシュネルスカヤ最高執行責任者(COO)は今月、地元メディアのフォーカス(ウクライナ語ではフォークス)の取材に「わたしたちの主な目的は戦場での人間の参加を最小限に抑えることです。それによって、ウクライナの兵士の命と健康が守られます」と説明している。地上ロボットについては「この戦争の次のゲームチェンジャーになるでしょう。これは敵の数的優位に対するわたしたちの非対称的な対応です」と語っている。

ブレイブ1のプロジェクトでどのようなロボットが生産され、戦場でどんな役割を果たすことになるのかについては、ほとんど詳細が明かされていない。ただ、過去に発表されたいくつかの資料からヒントを得られるほか、ソーシャルメディアに投稿された動画によって、すでに配備されている装備がどのように使われているか知ることもできる。たとえばある動画では、自爆型UGVが爆破薬によって橋を破壊している。別の動画では、UGVが多数のTM-62対戦車地雷を長い鎖でつないで引きずっている。無人車両を使うことで、工兵を敵の火力にさらさずに、ロシア軍部隊が進んでくる経路に地雷を設置できたとみられる。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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