欧州

2025.04.09 18:00

日本から送られた「資材運搬車」、ウクライナの泥道を走る 初の映像

日本から供与された「資材運搬車(PC-065B)」がウクライナで運用されている様子(Xに投稿された動画より)

日本から供与された「資材運搬車(PC-065B)」がウクライナで運用されている様子(Xに投稿された動画より)

ロシアがウクライナに対する戦争を拡大してから3年2カ月ほどの間に、日本は戦争で荒廃するウクライナにおよそ100億ドル(約1兆4500億円)の支援を表明してきた(編集注:この金額はドイツのキール世界経済研究所のデータに基づくものとみられる。日本政府によると120億ドル超)。筑波大学の東野篤子教授(国際関係論)が「nippon.com」の記事で説明しているとおり、日本の対ウクライナ支援は「殺傷能力を持たない」ものに限定されている。

日本から送られた工兵車両に乗っているウクライナ軍部隊は、そう言われると驚くかもしれない。このほどソーシャルメディアに投稿された動画で、諸岡製の「資材運搬車(PC-065B)」がウクライナで使用されている様子が初めて確認された。

日本政府は2023年5月、ウクライナに資材運搬車やトヨタグループ製の「高機動車」などを合計約100台提供すると発表した。翌月には、ポーランド経由で車両101台がウクライナに引き渡されたことが報告された

資材運搬車は荷台とクレーンを備えた重量約5tの装軌車両だ。非装甲・非武装の車両ながら重要な役割を担い、とくに前線での作業では車両も2人の乗員も危険にさらされる一方、ロシア側に損害を与えることにも間接的に寄与する。

泥通など悪路での機動性に優れ、広い荷台があり、重量物を持ち上げるクレーンも装備する資材運搬車は、工兵による掩蔽壕やその他の築城を支援できる。こうした防御用構築物は、数的に劣勢にあるウクライナ軍歩兵がロシア軍による砲撃やドローン攻撃を生き延びたり、猛烈な襲撃を撃退したりするのを助けている。

強みと弱み

日本から来た資材運搬車は、ウクライナ軍で就役するほかの兵站車両数百両に加わった。これらの車両には建設に最適化されたものもあれば、物資の運搬に適したもの、あるいは救護に向いたものなどもある。

資材運搬車や、オーストラリアから供与されたM113AS4、スウェーデン製のBv206とBvS10、ノルウェーから供与されたNM199(米国製M548のノルウェー版)などには重要な共通点がある。

装軌式で大きさの割に軽量なため、現在のような春などにウクライナの農村部を覆う泥濘地で高い走破性を発揮するという点だ。同じ機動力はウクライナ南部の湿地では年中役に立つ。

ウクライナ南部ヘルソン州を流れるドニプロ川の右岸(西側)を守るウクライナ海兵隊第40独立沿岸防衛旅団で、BvS10が救護車両として使われているのが目撃されているのも、それなりに理由があるということだ。

半面、軽量・軽装ゆえの欠点もある。ロシア軍のドローンや大砲など、あらゆる種類の火力に対してきわめて弱いことだ。ウクライナ軍は3年以上にわたる激しい戦いで、M113AS4、Bv206、BvS10、M548を計20両あまり失っている。幸い、資材運搬車の損失は確認されていない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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