15億ドル(約2300億円)の財源を確保できれば、チェコがこれらの砲弾を購入し、砲弾の枯渇するウクライナに送ることができるとされていた。破滅的な事態につながりかねないウクライナ軍の砲弾不足は、米議会のロシアに融和的な共和党議員たちが昨年10月、米国によるウクライナへの追加援助を妨害し始めたことに起因する。
ミュンヘンでの会議から3週間後の3月8日、チェコのペトル・パベル大統領は、砲弾調達の財源を18カ国からの資金拠出で確保したと発表した。あらためて指摘しておけば、18カ国に米国は含まれない。
朗報はさらに続いた。チェコ当局が先に示唆し、今週、米紙ウォールストリート・ジャーナルが報道で裏づけしたとおり、チェコは砲弾を追加で70万発発見した。18億ドル(約2700億円)とされる調達資金についても、支援諸国が提供を申し出ている。
ウクライナ軍の幹部らはすでに、これらの砲弾をどう配分・配備するか計画を練っている。その1人である著名な砲兵将校、コールサイン「アーティ・グリーン」は、ウクライナ軍の砲兵は新たに届く砲弾を用いて、ロシア軍が北朝鮮から供与されている砲弾で達成する以上の戦果をあげると見込んでいる。ロシアが北朝鮮から調達している砲弾の数は、ウクライナが今回、チェコのイニシアチブで入手する分よりも多いとみられるにもにもかかわらず、だ。
「わたしたちは大砲を(ロシア側)より効果的に運用できる」とグリーンは最近のインタビューで語っている。グリーンによれば、ウクライナ側の榴弾砲が狙いすまして発射する砲弾1発あたりのロシア兵殺害数は、ロシア側が無差別に発射する砲弾1発あたりのウクライナ兵殺害数よりも多いという。
チェコ主導の砲弾確保の取り組みによる効果は、ロシアがウクライナで拡大して25カ月たつ戦争のおよそ1000kmにおよぶ戦線で早くも表れ始めている。2月、ウクライナ軍の砲弾不足が最も深刻だった時期には、ウクライナ軍の砲兵部隊が1日に発射する砲弾数はわずか2000発ほどと、ロシア側の5分の1まで減っていた。