だが、ここへきて砲弾発射数の差は縮小しつつある。ウクライナ軍は戦線全体で防御線を維持しつつ、攻撃してくるロシア軍部隊に対して持ちこたえられないほど大きな損害を与えている。ロシア軍は最近、1日に人員を1000人、装甲車両を数十両失うことも珍しくない。
チェコが手配した砲弾の第1弾がウクライナに到着するのは6月になる見通しと報じられているが、ウクライナ軍の砲兵たちは新たな砲弾が近く届くと知って、緊急用に残していた最後の砲弾の備蓄に手をつけるのを以前よりもためらわなくなっているようだ。
ウクライナの高官の口から、久しく消えていた「攻勢」という言葉が再び聞かれるようになったのも、当面の砲弾確保のメドがたったことと無関係ではないだろう。
もっとも、ウクライナが年内に、大規模な攻勢をかけられるほどの新たな兵力を動員できるとは考えにくい。それにはおそらく数十万人規模の新兵が必要になる。それでも、攻勢への言及は、米国の援助が共和党によってなお阻まれながらも、ウクライナ軍の砲弾危機がひとまず終息しつつあること、また、ウクライナ首脳部のムードも改善しつつあることを示唆するものと言えそうだ。
欧州連合(EU)は昨年3月、ウクライナに向こう1年で砲弾100万発を供与する方針を示したが、実際の供与は遅れてきた。とはいえ100万発の残り分も、近いうちに順次ウクライナに届くはずだ。また米国のジョー・バイデン政権も先週、以前に承認していたウクライナ援助向け契約を見直して3億ドル(約450億円)を捻出し、砲弾を含む小規模な対ウクライナ追加支援に充当した。他方、ウクライナは欧州の一部支援国と2国間取引で少量ながら砲弾を調達しているほか、国内の工場でも砲弾をいくらか生産している。
すべて合わせると、ウクライナは今年、砲弾を200万発超確保できる可能性がある。これは年末まで、毎日少なくとも6000発発射できる数だ。
かなりの数だが、ロシアが今年確保できそうな砲弾数に比べれば見劣りする。ロシアは国内の工場で砲弾を年間200万発ほど生産している。そのうえ、北朝鮮からも大量の砲弾を調達している。2023年には北朝鮮からたぶん200万発ほどの砲弾を受け取り、今年さらに100万発かそこら入手する可能性がある。