それでも、ウクライナ軍将校のグリーンは心配していない。ウクライナ軍の砲兵のほうが「より創造的で賢い」と考えるからだ。彼がどのようなことを念頭に置いて言っているのかは明らかだ。
昨年末、ウクライナ軍の砲弾危機がいよいよ深刻になってくると、ウクライナ国内に何百とある小規模な工房のネットワークはFPV(1人称視点)ドローンの生産を拡大した。重量1kg程度のこれらのドローンは500gほどの爆発物を搭載して、最長で3kmかそこらの距離を飛行できる。
これらの工房は現在、ドローンを月に5万機超生産している。おそらく、ロシア側の実戦で有効なドローンの生産数を大きく凌駕しているとみられる。ウクライナ政府は今年、FPVドローン100万機の生産を目標に掲げている。
もちろんFPVドローンは、10kg超の炸薬を装填して25kmほど先まで届く重量45kgほどの砲弾の直接の代わりにはならない。それでも従来の砲弾を補うことはでき、ウクライナ軍の砲弾数での不利な状況を緩和するのに役立つ。
ウクライナ軍のよく知られた戦術の1つは、ロシア軍の密集した突撃部隊に狙いすました集中砲撃を加え、兵士や車両を散開させるというものだ。たとえこの砲撃自体では生き残っても、ばらばらになり、ジャマー(電波妨害装置)や防空装備にも守られなくなった兵士や車両は、FPVドローンの格好の標的になる。
ウクライナ軍の砲兵部隊は、以前はロシア軍の1個突撃部隊を撃破するのに砲弾を10発程度発射する必要があったとみられるが、現在はドローン部隊と連携して近くのFPVドローンにとどめを刺してもらうことで、わずか5発でそうできるようになっている。
エストニア国防省は先ごろ、ロシア軍の攻勢能力をなくすには、ウクライナ軍は2024年にロシア軍の人員10万人を死亡させるか重傷を負わせる必要があると試算している。ウクライナ軍が幸運にも、主にチェコを通じて入手できることになった200万発かそこらの砲弾は、その実現に大きく寄与するに違いない。
(forbes.com 原文)