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本当の「アクティビズム」について語ろう

いわゆる「もの言う株主」、アクティビストたちが「日本を狙っている」ともされる昨今。本来の「アクティビズム」の姿とは何か。伝説の投資家、ソロスとバフェットの薫陶を受けたスパークス代表・阿部修平が語る。



藤吉:最近、よく”アクティビスト”という言葉を聞くようになりました。いわゆる「もの言う株主」のことですが、2024年は、このアクティビストによる日本株への投資額が過去最高だったとも報じられています。一方で国内最大の調剤薬局大手のアインホールディングスが、筆頭株主である香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントから、役員解任などを求める株主提案を受けた(株主総会で否決)ことも話題になりました。

実際、株主が企業の経営に関してどこまでエンゲージすべきかというのは、難しい問題だと思います。そこで今日は、現代におけるアクティビストのあり方というテーマで、阿部さんにお話をうかがいたいな、と思っているんです。

阿部:それはまさに私たちが取り組んでいる大きな時代のテーマです。実はアメリカではあまり”アクティビスト”という言い方はしないんですが、昨年11月の日本経済新聞では”元祖・アクティビスト”の1人であるヘンリー・クラビス(米投資会社・KKR共同創業者兼会長)の「私の履歴書」が連載されていましたね。

彼は日本について〈今は機会しかない。企業が成長に転じた1980年代の米国のようだ〉と言っている。実は80年代のアメリカでは、企業買収をしただけで〈野蛮人〉批判されるほど、株式とか株主に対する経営者のマインドは遅れていた、と。そこで彼らは、企業を買収して株主として経営改革を提言する━━彼の言葉を借りれば、経営者、従業員、株主が企業を〈ともに所有する〉━━という、今では当たり前となった投資手法を始めた草分けとして、大成功を収めたわけです。現在81歳のクラビスの目には、そのときの成功体験と同じ景色が今の日本に見えているんですね。

日本企業のビジネスはタダ同然?

藤吉:それは具体的にどういう景色なんでしょうか。

阿部:ヒントは、このチャートを見ればわかります。

 
※ 日本:約2,700銘柄、米国:約3,300銘柄、欧州:約3,100銘柄、アジア(日本を除く):約9,200銘柄  出所:FactSet Pacific、スパークス・アセット・マネジメント

※ 日本:約2,700銘柄、米国:約3,300銘柄、欧州:約3,100銘柄、アジア(日本を除く):約9,200銘柄 出所:FactSet Pacific、スパークス・アセット・マネジメント

藤吉:なるほど……これはPBR(株価純資産倍率)の推移を各国比較しているんですね。

阿部:そうです。PBRとは、純資産に対して株が何倍買われているかを示した数字です。例えば純資産が1万円の企業の株価が1万5000円であれば、PBRは1.5倍になります。

で、1989年から2024年にかけての各国のPBRの推移がこうなっている。

藤吉:世界平均が2倍とありますが、アメリカの4.4倍というのはすごいですね。

阿部:今、史上最高値に近いです。市場では「ちょっと買われ過ぎているのでは」とアメリカ株への警戒感も生じてきているほどです。実際、先日ウォーレン・バフェットがアメリカ株を結構売却したことが話題になりましたよね。

藤吉:逆に日本の平均PBRは、ほぼ1倍です。これは”割安”ということですよね。

阿部:そうなんですが、PBRが1倍というのは本来理論的におかしいんです。極端に言うと、純資産以外の部分、つまりその企業のビジネスはタダということだから。

藤吉:確かにそうですね。

阿部:アベノミクスで株価は10~20%ぐらい上がったけど、日本のバブルがはじけた89年からの35年で見れば、ようやく1倍になった(元に戻った)に過ぎない。同期間のアメリカ株は17倍になりました。
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ext by Hidenori Ito/ photograph by Kei Onaka

連載

市場の波をつかむ12の方法 スパークス代表・阿部修平×Forbes JAPAN 編集長・藤吉雅春

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