藤吉:我々の雑誌でよく「未来予測」の特集をやるんですが、その企画を考えるのに編集者たちがいつも苦労しているんですね。もちろん未来のことは誰にもわからないので当然といえば当然なんですが、一方で阿部さんのような投資家は、ある程度、未来を予測しながら投資されているわけですよね。
阿部:藤吉さんの仰るとおり、未来のことは誰にもわからないので、「今、わかっていること」を徹底的に調べようというのが僕らのスタンスですね。
藤吉:阿部さんはこの連載でも「わかっていること」として多彩な統計データを駆使して先の見通しを語っておられます。それで僕も若い編集者に「統計を見て、そこから分析してみたら?」なんて受け売りで言ってるんですが、自分でそれができるかといえば、できないんですね(笑)。そこで今日は改めて、「データから未来を予測する方法」を阿部さんにうかがってみようと思ったんです。
阿部:いえ、あくまで〝我流〟なんですよ。例えば、ここにアメリカと日本の株価の時価総額の推移を比較したグラフがあります。
これを見るとアメリカ株はこの35年で約16倍の約4000兆円になったのに対して、日本株はずっとほぼ横ばいで今は約700兆円です。じゃあこれから先、それぞれの株価が倍になる確率はどちらが高いかな、と考えるんです。4000兆円が8000兆円へと上昇するのと、700兆円が2倍の1400兆円になるのと、どちらがありえそうか。
藤吉:日本の方が伸びしろはありそうですよね。
阿部:その程度の話で、それほど厳密な理論的背景があるわけじゃないんです(笑)。
藤吉:でも考え方としては合理的ですよね。
阿部:投資を仕事としている以上、第三者を納得させるだけの根拠は必要になります。