ビジネス

2024.05.25 09:15

マイクロソフト、グーグル、Uberで学んだ Figma山下祐樹CPO「私の働きかた」

FigmaのChief Product Officer(CPO; 最高製品責任者)を務めるYuhki Yamashita(山下祐樹) Courtesy of Figma


実際、CEOが自社の製品デザインやUXについて考えたり、話すようになったりしています。デザインならではの現象で、素晴らしいことです。それと一般論ですが、ナレッジ・ワーカー(知識労働者)のトレンドとして、これは社内の“サイロ化(タコツボ化)”の解消につながっているのではないでしょうか。例えば昔なら、営業職の人はエンジニアの仕事についてよくわからなかったかもしれません。だから、言われた通りにするか、わからないから、アウトソーシングしてしまっていたわけです。
 
でも今は、誰もがほかの仕事についてある程度の理解があります。コーディングは手が届きやすいものになりました。ツールも進化し、コラボレーションを前提にしていることが少なくありません。以前ならエクセルでファイルを共有しない人がいたかもしれませんが、今はブラウザ上で誰もが使えます。つまり、ツールが進化したことでお互いの仕事が身近になっているのです。AI(人工知能)もその手助けをしていると思います。AIを使う場合、正確に理解するにはすべてのテーマをより深く学ぶ必要がありますが、それでも、異なる仕事の役割や業務内容について知ることができるからです。
 
「境界が曖昧になる」ということは、実際にあらゆるところで起きている現象だと思います。学位によって引かれた境界線を再考することを求められています。誰もが他の人たちの仕事について理解し、自分がかかわることでそれをどう変えられるかもわかってきています。ビジネスのあらゆる部署で、誰もが「スタックを上っている(Up the stack.)」のです(編集部註:スタックとは入出力される基本的なデータ構造の一つで、ここでは、その上位につけることを意味する)。例えば、エンジニアはAIが実際にどのように機能しているかを知らないこともあります。それでも、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を使えば、AI上で何かを作れます。
 
エンジニアリングは、必ずしもそのメカニズムを理解していなくても、ライブラリやAPIを構築してきました。そしてユーザーは背後の仕組みがわからなくても、ライブラリやAPIを使って多くのものを作れます。デザインも同じように、すべてのピクセルをデザインする必要がありません。誰かがすでに作ったものの上でデザインできます。ピクセルの代わりに“レゴブロック”を使っているようなものです。あるいは、AIで“ドラフト(初稿)”を作るようなものでしょうか。“スタックを上がる”のはより高次のレベルへ移行することなので、ビジネスの場合は、より経営に近い人々と仕事をするようになります。ひょっとすると最高経営責任者(CEO)が、ユーザー体験について考えているかもしれない。そして今、デザイナーやエンジニア、プロダクト・マネジャーたちとの“距離感”がどんどん近づいている。それも、部署や役職の境界線が曖昧になっている一因なのではないでしょうか。
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文=井関庸介

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