──2012~13年ということは、すでにiPhone 5の頃でしょうか(笑)。
山下:iPhone 5の頃でしたね。Windows Phoneを使っていたので、上司に「今すぐiPhoneを買ってこい」と言われてアップルストアに行きました(笑)。マイクロソフト時代とは異なり、アプリ全体の担当をしています。グーグルでは、仕様の細部に責任をもつのはエンジニアやデザイナーで、私の役割はチームのメンバーが顧客体験における問題を理解して、適切な判断を下せているかを確認することでした。そのためには、現状の顧客体験を本質的に理解する必要があります。
顧客体験に問題がある場合は、すべてのメンバーが一貫したアプローチを取れるようにしなくてはいけません。つまり、自分自身をどのようにスケールさせるか、正確に理解してもらえるよう原則をどう説明するか、どうすればメンバーが同じような判断ができるようにするかということです。それにより、スタッフの意思疎通が取れ、一貫した意思決定ができるようになり、最終的に一貫したUXを提供できるのです。
それとグーグルには実験的な企業文化があり、「完璧に仕上げることに長い時間をかけるより、まずは試してみよう」というフットワークの軽さがありました。事業目標についても、それまで以上に深く考えるようになりました。大きなプロダクトの細部に携わっていると、自分の仕事がビジネス全体にどう影響するかを理解するのは難しいものです。YouTubeでは、ちょっとした仕様の変更でユーザーの視聴時間が増減し、広告量が変動し、収益が変わる──。その頃、モバイル端末は本当に重要になりつつありました。 シリコンバレーでは、モバイル端末を使って物理的な世界とデジタルの世界をつなげようとする「次の波」が来ていましたから。