ビジネス

2024.05.25 09:15

マイクロソフト、グーグル、Uberで学んだ Figma山下祐樹CPO「私の働きかた」

2014~2015年にかけて、配車アプリ「Uber(ウーバー)」や民泊アプリ「Airbnb(エアビーアンドビー)」のような企業が急成長を遂げました。次に移ったUberでは、共同創業者兼CEOのトラビス・カラニックがこうした潮流を「ビットとアトム(Bits and Atoms)」と表現していました。0と1で構成されるビットと、原子のアトムですね。これを互いにどうつなげるか、というのが私にとっての課題でした。というのも、テクノロジー、特にHotmailやYouTubeでは画面上でUXが常に変化するからです。

Uberの場合、スマホの画面上での体験は車内での体験ほど重要ではありません。最大の問題は、ドライバーを見つけること、そして迎えに来てもらうことです。Uberでは、私たちが「Rider Experience(乗車体験)」と呼ぶものを第一に考えていました。現在も使われているUberアプリの「乗車体験」は、私がUberで担当したプロジェクトの一つです。以前はタクシーメーターのような仕組みで、目的地で降りて初めて支払い額がわかるものでした。そこで私たちは、ユーザーが前もって支払う金額を正確にわかるように変更したかったのです。ユーザーは金額にもとづいてサービスを選べますし、私たちもよりスマートな価格設定ができるからです。
 
ユーザーの利便性を考えて透明化しようという試みでしたが、ビジネス的にはかなりリスクの高いチャレンジでした。利用者の多くはレシートを見てから「思っていたよりも高かったな」と感じるでしょうが、最初から「高い!」とわかれば使ってくれないこともあり得るからです。Uber在籍時には多くの浮き沈みを体験しました。その一つがドライバーからの信頼を失いかけたことです。私はまずドライバーの立場に立った「Driver Experience(ドライバー体験)」でアプリの改良に取り組み、ドライバーの信頼を取り戻そうとしました。それがどれだけ大事なことだったか、あとでよくわかりましたよ。

Uberでは最後の最後に、プロダクト・マネジメントからデザインに転向しました。そこでは自転車やスクーターなどの「新しいモビリティ」に携わりました。ハードウェアを扱うのは初めての経験でした。Figmaのことを知ったのはその頃です。たまたま、同社の製品を試しているチームで働いたのです。その時から数え、Figmaを使ってデザイン、製品管理、デザイン・リサーチをするようになってもう5年近く経ちます。
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文=井関庸介

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