ビジネス

2024.05.25 09:15

マイクロソフト、グーグル、Uberで学んだ Figma山下祐樹CPO「私の働きかた」


──AIといえばここ数年、生成AIが世界を席巻しています。FigmaではAIに対してどのようなアプローチを取っていて、製品にどのような機能を実装しているのでしょうか?
 
山下:じつは2023年、ホワイトボードツールの「FigJam(フィグジャム)」に AIを導入ました。私たちがAIについて理解を深め、その機能を使って製品を作るには良い方法ですね。Figmaデザインでも取り組んでいて、そちらの進捗状況も近々お伝えできるかと思うと楽しみです。概念的な面では、「AIはハードルを下げ、天井を上げる(AI is going to lower the floor and raise the ceiling.)」と考えています。今までデザインのプロセスに多くの人々が参加できなかったのは、「ハードルが高い」ように思われたからです。AIを使えば、少なくとも参加できるようになります。
 
アプリを改良するアイデアがあるとしましょう。今はまだデザイナーにメールやSlackでそのアイデアを伝えるだけかもしれませんが、これからはFigmaでアイデアを「視覚化」できます。すると、「こういうことを言いたかったのか!」と、議論の内容が濃くなりますし、フィードバックも洗練されます。これが「ハードルを下げる」ということです。
 
「天井を上げる」というのは、プロのデザイナーにとってそうした作業のすべてが格段に速くなるということです。デザインにも、同じ作業の繰り返しがあります。Uberのアプリをデザインするときも、特定のシチュエーションを別の市場、AndroidとiOS、ウェブサイトとモバイル、雨天と晴天とで、見え方を変える必要がありました。それぞれのシナリオを作るのですが、それなりに手作業が発生します。でもパターンを予測しやすいので、AIならば一つのコンセプトに対して、100通りのバリエーションを作ることができます。
 
その結果、クリエイティブな作業に時間を割けるようになります。これが「天井が高くなる」ことなのです。「GitHub Copilot(ギットハブ・コパイロット)」が好例です。エンジニアや開発者が不要になるという懸念もあるようですが、Copilotはジュニアとシニアの両方の開発者に役立ちます。ジュニア開発者はスタートラインに立てますし、シニア開発者は作業を速く進められ、大きなプロジェクトに集中できますから。
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文=井関庸介

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