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2025.04.14 12:30

マスクの野望を支える「衛星インターネット」事業の未来が危うい

イーロン・マスクとドナルド・トランプ米大統領(Kayla Bartkowski/Getty Images)

イーロン・マスクとドナルド・トランプ米大統領(Kayla Bartkowski/Getty Images)

人類を地球以外の惑星に移住させるという夢の実現には、莫大な費用がかかる。だからこそイーロン・マスクは、宇宙開発企業のスペースXで低コストのロケット開発に着手した後、そこから収益を上げる手段として、衛星ネットワークの「Starlink(スターリンク)」を立ち上げて、人里離れた地域にインターネット接続を提供することにした。「スターリンクは、人類を火星に送るための資金源だ」とマスクは昨年のX(旧ツイッター)の投稿で述べていた。

スターリンクの進展は目覚ましい。このサービスの加入者数は、立ち上げから5年足らずの今年3月に500万人に到達し、投資家がスペースXに巨額の資金を投資する主な理由の1つとなっている。スペースXの評価額は、昨年12月のインサイダー向けの取引で3500億ドル(約50兆円)に達し、世界で最も価値の高い非公開企業となった。

マスクが率いる電気自動車(EV)メーカー、テスラの株価は、販売不振やマスクの政治への関与に起因するブランドイメージの低下によってここ数カ月で半分以下に下落したが、スペースXの評価額はほぼ維持されている。

とはいえ、同社の評価額もまた見直しを迫られる可能性がある。というのは、スターリンクの将来性が、投資家が想定しているほど高くないかもしれないためだ。投資家は、スペースXに関してもテスラと同様に、マスクの壮大なビジョンをどれだけ信用できるか、そして財務内容をどこまで無視できるかを問われている。

「マスクはロボットであろうと自動運転車であろうと、さらには火星の都市構想であろうと、人々が信じるかどうかは別として、次々に奇跡を生み出そうとしている」と、通信関連のコンサルタントであるティム・ファラーはフォーブスに語った。しかし、彼はまた「現状のスターリンクの単体の事業と成長見通しだけで、今のような評価が正当化できるとは思えない」と述べている。

スターリンクの「限界」

宇宙ロケットは魅力的な事業だが、宇宙への貨物の打ち上げ市場は、それほど大きなものとは言えず、年間100億〜150億ドル(約1兆4300億〜2兆1400億円)程度の規模だ。それに対して、通信分野はまったくの別物で、年間1兆ドル(約143兆円)を超える市場となっている。スペースXは、スターリンクを通じてそこに食い込んでいる。

スペースXは、すでに地球の低軌道上に7100基の衛星コンステレーションを構築しており、スターリンクはこれらの衛星を使って、航空機や船舶向けにインターネット接続を提供したり、軍用版の「Starshield」を政府に売り込んだりして収益を上げている。また、携帯電話の圏外の地域で緊急通話を可能にするサービスで、ASTスペースモバイルやグローバルスターといった企業の競合になることも目指している。しかし、最大のチャンスは家庭用のインターネット接続であり、調査会社Quilty Spaceは、今年のスターリンクの売上の63%がこのカテゴリーから生まれると見込んでいる。

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編集=上田裕資

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