米国では共和党のドナルド・トランプ大統領が政権の座に返り咲いたことで、億万長者が勝者になるだろうと思われていた。ところが新政権発足から数週間で、同国の大富豪の運勢は急落した。本稿では、最大の敗者となった面々を紹介しよう。
現在のトランプ政権には、米国の歴代の政権の中で最も多くの億万長者がおり、その数は少なくとも9人に上る。トランプ大統領には多くの大富豪の友人がおり、昨年の大統領選挙から今年初めの就任式までの間に16人の億万長者を米フロリダ州の私邸マールアラーゴに招待した。米IT大手メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、2月と3月にトランプ大統領とホワイトハウスで会談したとも報じられた。
だが、ビジネスと資本主義を信奉する大統領自身が大富豪でもあることは、これまでのところ「億万長者クラブ」のメンバーにとってあまり良い結果をもたらしていないようだ。トランプ大統領が就任した1月20日以降、3月13日までの間にS&P500種株価指数は7.9%下落し、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は11.8%落ち込んだ。これにより、米国の富裕層は大きな打撃を受けた。フォーブスは、同国の億万長者が被った損失の総額を4150億ドル(約60兆円)と見積もっている。
これとは対照的に、民主党のジョー・バイデン前大統領が2021年1月20日に就任した際には、同じ期間中にS&P500指数は2.4%上昇し、ナスダック指数の下落も1%にとどまった。同期間中、米国の億万長者は合計で1530億ドル(約22兆1000億円)資産を増やした。
株価下落の要因の1つは、トランプ政権の関税政策だ。これにより、企業の経営陣が嫌う経済の不確実性が生じることとなった。中でも最も大きな打撃を受けたのは、トランプ大統領の右腕であり、フォーブスの「世界長者番付」で首位に立つ米実業家のイーロン・マスクだ。