同大統領が就任した1月20日時点で、マスクの資産は4340億ドル(約62兆7000億円)に達していた。しかしそれ以降、マスクがCEOを務める米電気自動車(EV)大手テスラの販売が、ドイツ、中国、オーストラリアで劇的に落ち込んだことから、米銀最大手JPモルガン・チェースは今年第1四半期のテスラの販売台数の予測を20%下方修正し、2022年第3四半期以来最低となる35万5000台とした。全米のテスラ販売店では、トランプ大統領の側近として政界に進出したマスクCEOに対する抗議行動が勃発しており、中には破壊行為を伴うものもある。こうした中、テスラの株価は同大統領就任以降43%下落した。フォーブスの推計によれば、マスクの資産は3月13日の株式市場の終値時点で3300億ドル(約47兆7000億円)まで減少した。純資産が24%減少したにもかかわらず、マスクは世界で最も裕福な人物の地位を維持している。
米ベアード・プライベートウェルス・マネジメントの投資ストラテジスト、ロス・メイフィールドは、マスクの資産への打撃は驚くべきことではなく、政界への進出ともあまり関係がないと考えている。その上で、「景気が減速に向かうと、自動車と循環株が最も大きな打撃を受ける。自動車は貿易や関税の影響も受けやすい」と説明した。
景気の低迷は複数のハイテク株にも大打撃を与えている。米大型ハイテク7社(テスラ、エヌビディア、アルファベット、アマゾン、メタ、アップル、マイクロソフト)を指す「マグニフィセント7(壮大な7銘柄)」もかつては優勢だったが、景気減速に対する懸念の中、1月20日以降、時価総額が合計で1兆5000億ドル(約216兆8000億円)以上下落した。アマゾン創業者のジェフ・ベゾス、アルファベット(グーグル)の共同創業者セルゲイ・ブリン、メタのザッカーバーグなど、米大手ハイテク企業のトップはそろってトランプ大統領の就任式に出席した。これらの大物経営者たちは現在、大統領就任式以降、最も多くの財産を失った人々に名を連ねている。