グーグルの親会社であるアルファベットは3月17日、レーザー光を用いてインターネット接続を提供するプロジェクト、Taara(ターラ)を正式にスピンオフしたと発表した。アルファベットのX(旧Google X)で開発されたTaaraのテクノロジーは、衛星を使用するのではなく、光通信技術を活用することでネット接続を提供することを目指している。
このスピンオフで独立企業となった同社は、イーロン・マスクの衛星インターネットサービスであるStarlink(スターリンク)の代替となるサービスを提供しようとしている。
Taaraは今後、外部からの投資を受け入れて、より積極的に事業を拡大できる可能性がある。同社は、すでにベンチャーキャピタルのSeries X Capitalからの支援を受けており、アルファベットは少数株主として関与を続けるという。
Taaraは現在、インドのバーティ・エアテルや米国のTモバイルなどの通信事業者と協力しているが、今後は新たな事業者との提携で高額なインフラ投資を必要とせずにネットワークを拡張できるようになる可能性がある。
スターリンクは、低軌道衛星を使用してインターネット接続を提供しているが、Taaraは「Free Space Optical Communications(FSOC)」と呼ばれる、目に見えないレーザー光を用いた超高速のインターネット接続を提供する。FSOCは、最大20キロメートルの距離を20ギガビット毎秒の通信速度で結ぶことが可能で、通信環境が整っていない地域や遠隔地へのネット接続の提供手段として注目されている。
レーザーを用いたインターネット通信の技術は、以前から存在していたが、Taaraは天候による影響などの主要な課題を克服することで実用化を進めている。同社のスマートターミナルはセンサーとアルゴリズムを駆使し、リアルタイムで位置調整を行うことで、安定した接続を維持している。
コスト効率で有利
スターリンクとTaaraはいずれもインターネット接続が困難な地域にサービスを提供することを目的としているが、そのアプローチは大きく異なっている。スターリンクは衛星を活用し、地上局にインターネット信号を送信することで、船舶や農村部などの孤立した場所に接続を提供する。一方、Taaraの場合は、既存のネットワークをレーザーを用いて拡張するものであるため、コスト効率が高い代替手段になることが可能だ。
ただし、Taaraにはいくつかの制約もある。レーザー光を用いた通信は、ターミナル同士の間に視界が確保されている必要があり、天候の影響でパフォーマンスが低下することがある。
一方、スターリンクはインフラが宇宙にあるため、通信に関する規制や、衛星打ち上げの認可、地政学的な問題などをクリアする必要があり、そのための時間と莫大な資金が必要だ。
衛星インターネットの分野でも競争は激化しつつある。例えば、欧州ではEutelsat OneWeb(ユーテルサットワンウェブ)がスターリンクの競合として台頭している。特にウクライナでは、スターリンクの継続性に対する懸念があることから、その代替としての展開を進めている。
こうした新たなネット接続のプロバイダーの成功は最終的に、規制上の課題をクリアし、従来の通信手段と同等のスケールと信頼性を確保できるかどうかにかかっている。