地球の海底よりも、月の表面のほうがより詳しい地図が作成されている。高解像度の地図が存在するのは、海底全体の10%にすぎない。研究者は数十年にわたり、こうした状況を変えるための活動に取り組んでいる。現在進行中の取り組みの一環として、米航空宇宙局(NASA)が支援する研究チームは最近、フランス国立宇宙研究センター(CNES)の研究者と共同で、これまで作成された中で最も詳細な海底地図を公開した。地図の作成には、次世代衛星高度計ミッションSWOT(Surface Water and Ocean Topography、表層水と海洋地形)の観測データを利用した。

2022年12月に打ち上げられたSWOT衛星は、海や湖、貯水池、河川の水面の高さを測定する。研究者はこの標高データの差異を用いて、淡水および海水の表面の立体地図を作成できる。このデータは、海氷の変化の評価や、洪水が河川の下流域に進む様子の追跡調査などの作業に利用できる。
SWOTは21日周期で地球全体の約90%を調査するため、研究チームは付加的なデータを用いて世界の海洋の地図を作成した。
海底山脈などの隆起域は周囲よりも質量が大きく、重力が強いため、上部の海面をわずかに変形させる。これまでの(GEOSATのような)海洋観測衛星で検出されていたのは、比高(海底から頂上までの高さ)が約1000mを上回る海山などの大規模な海底地形だった。SWOT衛星はこの半分足らずの比高の海山や海丘を検出できるため、既知の海山の数が4万4000から10万に増加する可能性がある。

今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、米スクリップス海洋研究所の海洋学者のヤオ・ユーは「海丘は地球上で最も数多く存在する地形で、海底の約70%を占めている」と説明する。「幅が数kmしかないため、宇宙空間から観測するのは難しい。SWOTがこれほど巧みに海丘を認識できたのは驚きだった」