約250万年前に起きた超新星爆発から地球に飛来した宇宙放射線によって、アフリカ最深の湖タンガニーカ湖のウイルスの進化が加速された可能性があるとする最新の研究結果が発表された。
ブルンジ、コンゴ民主共和国、タンザニア、ザンビアの4か国に面しているタンガニーカ湖は、全長670kmを超える世界で2番目に大きな淡水湖だ。今から200万年~300万年前の間に、湖の魚に感染するウイルスの種類が謎の急増を示した。米カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)の研究チームは今回の最新研究で、この急増が遠方にある恒星の爆発によって引き起こされた可能性が高いとする説を提唱している。
超新星とは
超新星は恒星が引き起こす大爆発で、膨大なエネルギーと宇宙放射線を宇宙空間に放出する。この宇宙線が地球に到達すると、地球の大気や気候、生物多様性に影響を与える可能性がある。
超新星は大質量の超巨星が自己崩壊する現象だ。超新星爆発は通常、核融合燃料を使い果たした恒星のコアが自己重力で崩壊すると発生し、恒星自体が属する銀河全体よりも明るくなる場合がある。恒星の外層が宇宙空間に吹き飛ばされ、銀河全体に元素を拡散し、理論上は新たな星形成の種まきをすることになる。
放射線の急上昇
天文学誌Astrophysical Journal Lettersに掲載された今回の最新論文では、海底で見つかった鉄の放射性同位体(60Fe)の年代測定から250万年前の超新星を特定し、これをほぼ同時期に地球を襲った放射線の急上昇と結び付けている。60Feは超新星爆発で生成・放出されると考えられている。研究チームの説によると、この爆発は生物のDNAを損傷するほど強力で、タンガニーカ湖のウイルスを新種に変異させた可能性がある。研究チームは超新星爆発のシミュレーション結果から、宇宙線が爆発後10万年にわたって地球に降り注いだことを明らかにした。
論文の筆頭執筆者で、UCSC学部生のケイトリン・ノジリは「60Feは、超新星が起きていた年代をさかのぼる手段の1つだ」として「200万年~300万年前に、近くで超新星が起きたと考えられる」と説明している。