宇宙

2025.03.08 10:00

「太陽が地震を引き起こす?」太陽熱と地震活動に関連性 筑波大研究

国際宇宙ステーションの第7次長期滞在クルーが2003年に撮影した、太平洋に沈みゆく太陽と地球の水平線。雷雲の金床形の雷頂も見えている(NASA)

国際宇宙ステーションの第7次長期滞在クルーが2003年に撮影した、太平洋に沈みゆく太陽と地球の水平線。雷雲の金床形の雷頂も見えている(NASA)

世界で3人に1人が地震の危機にさらされており、この数は過去40年間でほぼ倍増している。地震は毎年、多くの犠牲者と莫大な直接的経済損失をもたらしており、家屋の損壊や倒壊、インフラの破壊、生産拠点の操業停止、輸送路の寸断などを引き起こしている。地域の地震リスクを把握することの優先度が現在、かつてないほど高まっている。

地震の背景にある基礎科学は比較的単純だ。地殻プレートが移動することで蓄積されるひずみエネルギーが、最終的に地震の形で解放される。だが、何が地震の引き金になるのかについては、科学者はいまだに解明できていない。

影響を及ぼす要因としては、岩石の強度、岩石層中の断層や脆弱な層の存在、岩盤の力学的特性に対する水の影響などが挙げられる。

最近では、この他に考えられる、ときに一風変わった要因に着目した研究が行われている。例えば、地球の地殻やマントルやコアと相互作用する、潮汐力月の満ち欠け日食太陽フレア(表面の爆発現象)、氷河の後退、気象パターンなどだ。

筑波大学と産業技術総合研究所の研究チームが発表した最新の研究論文では、また別の要因を提唱している。それは、太陽熱の流入だ。今回の研究は、同じ研究チームが行った太陽活動、特に太陽黒点の数と地球の地震活動が関連する可能性に関する先行研究に基づいている。地震と太陽の電磁放射を関連付ける一部の研究が議論を呼んでいるが、今回の研究はそれとは異なり、太陽が地球の表面を温めることが、この関連性の背後にある要因となっているとの説を提唱している。

研究チームは数値計算手法を用いて、地震データを太陽活動の記録および地球の表面温度と比較分析した。

その分析結果の中でとりわけ研究チームが注目したのは、地球の表面温度をモデルに組み込むと、特に震源の深さが70km未満の浅発地震に関して予測の精度が高まることだった。

論文の筆頭執筆者で、筑波大のデータ分析専門家のマテウス・エンリケ・フンケイラ・サルダナは「太陽の熱が大気の温度変化を促進し、それが原因となって岩石の物性や地下水の運動などに影響が及ぶ可能性がある」と指摘する。

「このような変動によって岩石がより脆く、割れやすくなる可能性があり、降雨量と融雪量の変化によって地殻プレートの境界に加わる圧力が変化する可能性がある」と、フンケイラ・サルダナは説明している。

この影響は非常に小さく、地震を引き起こす主な要因となる可能性は低いものの、地震のモデル化と予測のための統計的手法の改善に役立つ可能性があると、論文は指摘している。

「これは非常に興味深い方向性であり、今回の研究が地震の引き金になっているもののより広範な全体像に光を当てることを期待している」と、フンケイラ・サルダナは結論付けている。

地震がいつ起こるかやどのくらい強力かを予測するのは、現在のところ不可能だ。科学者は、地域の地震リスクに関する理解を向上させ、耐震性の建物やインフラ強靭化対策への投資が必要な場所を示すための統計資料や地図の作成に取り組んでいる。

今回の研究論文「The role of solar heat in earthquake activity」は学術誌Chaos: An Interdisciplinary Journal of Nonlinear Scienceに掲載された。追加資料とインタビューは米国物理学協会(AIP)から提供された。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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