宇宙

2025.03.05 17:00

2025年3月24日、土星の環が「消えて」しまう その理由

NASAのハッブル宇宙望遠鏡が2022年9月22日に撮影した土星(NASA, ESA, and Amy Simon (NASA-GSFC); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))

NASAのハッブル宇宙望遠鏡が2022年9月22日に撮影した土星(NASA, ESA, and Amy Simon (NASA-GSFC); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))

大きな美しい環を持つ土星は、太陽系の惑星の中でもとびきり印象的な天体だ。ところが、その環が3月24日に「消えて」しまう。小型望遠鏡にさえはっきりと映り、背筋がぞくぞくするほどの存在感を放つ土星の環が、まったく見えなくなってしまうのだ。

土星の環の消失はなぜ起こるのか、そしていつ復活するのか。知っておきたいことをまとめた。

土星の輪が消える理由

米航空宇宙局(NASA)によると、土星の環は本星の重力によって分解されつつあり、約1億年後には完全に消失してしまうと予想されている。ただ、今回の場合は、環が実際に消えてなくなってしまうわけではない。しばらくの間、地球から見えなくなるだけだ。

土星は約29年かけて太陽を1周しており、地球からの見え方は互いの位置関係によって変わる。この公転軌道に対して、土星の自転軸は26.7度傾いている。これは地球の自転軸(地軸)が23.5度傾いているのと同様で、つまり土星にも季節があることを意味する。

土星が北半球の秋分(左下)から冬至(右上、南半球では夏至)に向かうにつれて、環の傾きが大きくなる様子。NASAのハッブル宇宙望遠鏡が1996~2000年に撮影(NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)Acknowledgment: R.G. French (Wellesley College), J. Cuzzi (NASA/Ames), L. Dones (SwRI), and J. Lissauer (NASA/Ames))
土星が北半球の秋分(左下)から冬至(右上、南半球では夏至)に向かうにつれて、環の傾きが大きくなる様子。NASAのハッブル宇宙望遠鏡が1996~2000年に撮影(NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)Acknowledgment: R.G. French (Wellesley College), J. Cuzzi (NASA/Ames), L. Dones (SwRI), and J. Lissauer (NASA/Ames))

土星の赤道面に位置する環もやはり公転軌道面から26.7度傾いているため、地球から見たときの環の傾きは公転による位置関係の変化に伴って、大きくなったり小さくなったりする。現在、地球から見た環の傾きは小さくなっていて、3月24日には真横を向くため、環は見かけ上消失してしまう。

「環のない」土星

土星の環の消失中は、環の状態を観察できないが、今回は土星そのものの観測にも最適な時期とはいえない。土星は3月12日(中央標準時)に「合(ごう)」となり、地球から見て太陽と同じ方角にきて、そのまぶしさの中にすっかり隠れてしまう。

土星の環の拡大画像。細い環が無数に集まって円盤状の大きな環を構成していることがわかる(NASA)
土星の環の拡大画像。細い環が無数に集まって円盤状の大きな環を構成していることがわかる(NASA)

土星の輪はいつ戻る?

2025年は年間を通して土星の環の観測には向かないが、9月21日に土星は地球から見て太陽とちょうど反対側の位置にくる「衝(しょう)」を迎える。土星が地球に最も接近し、最も明るく見える瞬間だ。この頃には地球から見た環の傾きが少し大きくなる。傾きは来年以降さらに大きくなり、2032年に最大となる。その間、環はだんだんと太く明るく、観測しやすくなっていく。

土星の環は塵と水の粒子で構成されており、約98%を水の氷が占めている。非常に薄く、NASAによればメインリング(主リング)部分の厚みはわずか10メートルほどしかない。一方、半径は約14万キロにも及ぶ。

NASAとESA(欧州宇宙機関)が共同開発した探査機カッシーニが2015年7月29日に撮影した土星の環と衛星エンケラドス(NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)
NASAとESA(欧州宇宙機関)が共同開発した探査機カッシーニが2015年7月29日に撮影した土星の環と衛星エンケラドス(NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)

forbes.com原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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