宇宙

2023.05.18

土星の輪は極めて短命、見られるのは「幸運」との研究結果

NASAのハッブル宇宙望遠鏡が撮影した土星。2022年9月22日(SCIENCE: NASA, ESA, AMY SIMON (NASA-GSFC) IMAGE PROCESSING: ALYSSA PAGAN (STSCI))

宇宙や天文学が好きな人に、興味を持ったきっかけを聞いてみると、望遠鏡で土星の輪を見たことだったと答える人は多い。自分の目で見る土星の輪は息をのむ光景だ。だが、宇宙時間でみれば土星の輪はごく一瞬しか存在しないもので、すでに老年期にあることを示した研究結果が発表された。

土星の7つの輪は、惑星表面から約30万kmの範囲にあり、およそ98%が氷だ。5月12日にScience Advancesに掲載された研究論文によると、これらの輪の歴史は4億年に満たないのだという。NASAは、土星の輪が1億年以内に土星の重力に引っ張られて消えてしまうかもしれないと説明している。

論文の筆頭著者、米コロラド大学ボルダー校大気・宇宙物理学研究所(LASP)のサシャ・ケンプ准教授は「輪がそれほど短命なら、私たちはなぜ今それを見られるのか? あまりにも運が良い」と述べている。

20世紀の終わりまで、土星の輪は惑星の誕生と同時に形成されたと考えられていた。しかし、最近になって、輪はもっと若いという証拠が集まってきた。

なぜ土星に輪があるのかは謎のままだ。2022年に発表された論文では、約1億6000万年前に土星の重力が衛星の1つを引きちぎった時に形成された可能性が論じられた。

今回の論文では、土星の輪は太陽系のちりが氷の上に固定されてできた産物だと説明されている。研究チームは、土星系でちりが積もる速さを研究することで、土星の輪の年齢を特定した。

使用したデータは、NASAの土星探査機「カッシーニ」に搭載された宇宙塵分析装置が収集したもの。同探査機は2004年から2017年まで土星を周回していた。土星の輪には、1平方フィート(約30cm四方)あたり1g以下のちりが毎年蓄積されていると推定された。

「きれいなカーペットには、ほこりが溜まっていく。それは(土星の)輪でも同じだ」とケンプは説明した。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事