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2025.03.28 12:30

ChatGPTで写真を「ジブリ化」 最新AIトレンドが生む悲しみ

Dasian / Shutterstock.com

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OpenAIが、AIによる画像生成の「パンドラの箱」を開けてしまった。主にMidjourneyやDall-Eなどのツールでは数年前から行われていたことが、このたび「Chat GPT 4o」でも可能になったのだ。それは、写真をアップロードし、特定のアニメ作品風の画像に変換する機能だ。

X(旧ツイッター)上ではこれにより、宮崎駿が率いるスタジオジブリのアニメ映画に似せて加工した画像の投稿があふれかえった。いずれも、ジブリ作品の細かな特徴を、これまで不可能だったレベルで再現している。人々は自分の写真や、ネット上の有名なミーム画像をChatGPTに読み込ませ、ジブリ風に改変している。

特定のアーティストやアニメのファンにとって、今回のトレンドは大きな悲しみを生むものだ。制作現場へのAI導入のトレンドに絶対に乗らないスタジオやアニメーターが唯一いるとすれば、それはジブリと宮崎であろう。なので、こうした画像がAI技術の最新デモとしてネット上に拡散している現状は、非常に心が痛む。過去に宮崎自身がAIを使用したアニメーション技術のデモを見せられた際、次のように強く非難したことは有名だ。

「極めて不愉快ですよね。そんなに気持ち悪いものをやりたいなら勝手にやっていればいいだけで、僕はこれを自分たちの仕事とつなげたいとは全然思いません。極めてなにか生命に対する侮辱を感じます」

だというのに、このありさまだ。OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)でさえも、Xのプロフィル写真をジブリ風の画像に変更している。

OpenAIはすぐに、このトレンドがもたらし得る問題に気付いたのか、この機能に制限をかけたもようだ。ChatGPTで写真を「スタジオジブリ風」にしてとリクエストすると、コンテンツポリシーに反するという返答が表示されて、画像が生成できないこともある。だが、人々はさまざまな方法でこの制限を迂回している。

OpenAIがこのような画像生成・加工技術を公開したことは、技術的な意味では確かに感心する。AIが生成した画像の中にはおぞましいものも山のように存在するが、今回のレベルの技術が開発されたことに対しては、いくぶん畏敬の念を抱かざるを得ない。しかし、クリエイティブと道徳のどちらの面から考えても、これは恐ろしいことだ。AIは、あらゆるクリエイティブ分野を破壊する方向に進み続けている。

アーティストやアニメーター、作家はAIを毛嫌いするかもしれないが、AIがターゲットしているのはそうした人々ではない。標的は、スタジオジブリ風のミームを作ってネットに投稿して楽しむような人々、人間ではなくAIを使っても「十分」なクオリティが得られるとみなす人々だ。残念ながら、AIの作るコンテンツは、日に日に説得力を増している。

ジブリに限らずアニメやアート作品全般の愛好家として、私は今回のトレンドを目にし、打ちひしがれている。この流れに対抗できるという望みさえも、急速に失われているように感じる。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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