米民間調査機関コンファレンスボード(CB)が3月25日に発表した3月の期待指数(所得や労働環境の短期的な見通しを示す数値)は、前月から9.6ポイントマイナスの65.2に急落し、12年ぶりの低水準となった。この指標は、景気後退(リセッション)の兆候とされる80の基準を大きく下回っており、トランプ政権の経済戦略が本格化する中で、消費者の間に懸念が広がっていることが示唆されている。
さらに、より広範な消費者信頼感指数(CCI)も前月から7.2ポイント低下の92.9となり、4年以上ぶりの低水準を記録した。これは、ファクトセットがまとめたコンセンサス予測の94.5も下回っている。
このようなセンチメントの悪化は、米国が景気後退に陥る可能性があるというエコノミストの警告の増加とともに起こっているが、その背景にはトランプ政権の関税や移民関連の政策が挙げられている。
CBによると米国人の約3分の2が、今後1年以内に米国が「ある程度」または「非常に高い確率」で景気後退に陥る可能性があると考えている。コメリカ銀行のエコノミストであるビル・アダムスは、フォーブスに宛てたEメールで、「消費者は、関税の引き上げや貿易戦争、政府効率化省(DOGE)による人員削減、株価の下落などのニュースに動揺している」とコメントした。
また、消費者の今後6カ月間の家計状況に対する期待も、2022年7月以来の最低水準に低下した。CBの上級エコノミストを務めるステファニー・ギシャールは、「経済や労働市場への懸念が、消費者の個人的な見通しにも影響を与え始めている」と説明した。
一方、金融市場は、最も深刻な景気後退への懸念をすでに振り払った可能性がある。S&P500は、3月13日の底値から約5%上昇しており、景気後退に対して脆弱と見なされるグロース株が回復をけん引している。エヌビディアやテスラは過去2週間でいずれも10%以上上昇した。
全米経済研究所(NBER)は、景気後退を「数カ月以上にわたり経済全体に広がる実質的な経済活動の大幅な減少」と定義している。同研究所は、過去20年間の景気後退の例として、2007年12月から2009年6月の「グレート・リセッション」と、2020年2月から4月の「新型コロナ不況」を特定している。
今月初めにはアトランタ連邦準備銀行が2025年第1四半期の経済成長をマイナスと予測し、トランプ大統領とベッセント財務長官が、関税主導の政策によって景気後退が起きる可能性を否定しなかったことから、景気後退への懸念が再燃した。しかし、FRBのパウエル議長は先週、「景気後退の可能性は高まってはいるが、その確率は高くはない」と述べていた。