トランプ米大統領とその経済顧問らが先日、米国経済が景気後退(リセッション)に陥る可能性を否定しなかったことを受けて、ウォール街や消費者に動揺が広がっている。一部の経済学者たちも、トランプ政権の政策が深刻な景気後退を招く可能性があると警告している。ここでは、米国経済がどれほど危機的な状況に近づいているかを知るための専門家のコメントや各種のデータを紹介する。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のアンダーソン経営大学院が、3月18日に発表した経済予測レポートの中で、同大学院の経済学者クレメント・ボールは、トランプ政権の経済政策がすべて実現すれば、「米国経済は深刻な景気後退に陥りかねない」と警告した。
ボールによると、景気後退を避けるためには、トランプが導入を狙う「過去100年で最も厳しい関税」や、イーロン・マスクが率いる政府効率化省(DOGE)による公共部門の解体が「緩和されるか、より段階的なものになること」が必要だという。
ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミストであるマーク・ザンディも、19日のCNNの番組で同様の見解を示し、「今の状況は、まるで景気後退へと押し込まれているように感じる」と述べていた。「景気後退のリスクは不快なほど高まっており、上昇している」とザンディは述べ、景気後退入りの可能性が、「今はまだ50%未満だが、今後の大統領の判断次第だ」と語った。
トランプは9日に放送されたFOXニュースのインタビューで、景気後退の可能性を否定せず、自身の政策の導入が進めば経済が「移行期間」に入ると警告した。また、株価の下落には、ほとんど注意を払っていないとも述べた。
ベッセント財務長官もまた、景気後退の可能性を否定せず、米国経済が「デトックス(解毒)の時期」を迎えるだろうと発言した。彼は、16日に放送されたNBCニュースのインタビューで、「正しい税政策を実施し、規制を緩和し、エネルギーの安全保障を高めれば、長期的にマーケットは素晴らしい結果を残すだろう」と述べていた。
景気後退の定義は、国によって異なるが、欧米では一般的に国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となった場合を景気後退とみなしている。現時点での米国の四半期あたりの実質GDP成長率は、まだマイナスに転じていないが、アトランタ連邦準備銀行の予測モデルのGDPナウは現在、2025年第1四半期のGDPを、「2020年以降で最悪」の年率1.8%のマイナス成長と予測し、懸念を引き起こしている。ただし、この予測モデルの数値は、金の輸入の急増による偏りを含む可能性が指摘されている。