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宇宙

2025.03.06 08:15

地球の生命は「銀河の雪」から誕生か 謎の天体の正体とは

アルマ望遠鏡がとらえた謎の氷天体からの分子に固有の波長の光(プレスリリースより)

アルマ望遠鏡がとらえた謎の氷天体からの分子に固有の波長の光(プレスリリースより)

宇宙のどこで生命のもとになる有機分子が作られ、どのように地球に運ばれてきたのか。天文学の大きな謎のひとつとされているが、その解明の鍵を握るのが「銀河の雪」だ。新潟大学と東京大学による研究チームは、そうした雪に包まれた2つの氷天体を解析した。これまで知られているどの氷天体とも特徴が異なる謎の天体だが、新たな有機分子生成の場である可能性が高い。

銀河には、氷が作られる領域がある。炭素、酸素、ケイ素、鉄などの微粒子「星間塵」に、極低温状態で原子や分子が付着して氷の粒「星間氷」になる。雲の中で雪が作られるのと同じ原理だ。この星間氷の中は密度が非常に高いため、生命の構成要素である複雑な有機分子が生成されやすい。こうした星間氷は、星の誕生前の分子雲や星の形成途上で多く見られ、また、激しく質量を放射する年老いた星でも見ることができる。

謎の天体は「たて・ケンタウルス腕」ぼ方向に位置する。サイズも特徴もよく似ているが3万から4万光年離れた独立した天体。

謎の天体は「たて・ケンタウルス腕」ぼ方向に位置する。サイズも特徴もよく似ているが3万から4万光年離れた独立した天体。

新潟大学自然科学系の下西隆准教授、東京大学大学院理学系研究科の尾中敬名誉教授、左近樹准教授らからなる研究チームは、2021年に赤外線衛星「あかり」によって発見された水や有機分子を含む星間氷に包まれた2つの氷天体をアルマ望遠鏡でさらに詳しく調べたところ、これらが放つ電磁波の分布が、形成段階の若い天体のものとはかけ離れていた。どちらかと言えば年老いた天体の分布に近いが、年老いた天体の星間氷に有機分子は含まれない。さらに、サイズはコンパクトながら、周囲に放出されるガスの一酸化ケイ素の濃度が異常に高い(激しい衝撃波で星間塵が破壊されている)ため、ガスをかき乱す激しいエネルギー源があると考えられる。これらの特徴は、これまでに知られているどの氷天体とも異なり、従来の観測結果では説明がつかない。

2つの氷天体のエネルギー分布は、既知の氷天体のものとは大きく異なる。

2つの氷天体のエネルギー分布は、既知の氷天体のものとは大きく異なる。

これらが新たな有機分子生成の場である可能性が高いのだが、今のところ正体はまったく不明という神秘の雲に包まれている。観測精度が上がれば新たな発見があり、生命誕生の謎の解明に一歩近づくものの、同時に謎も深まる。とことん追究していった先には何があるのだろうか。宇宙探査の夢はつきない。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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