「かんむり座T星(T CrB)」は、およそ80年周期で白色矮星が爆発現象を繰りかえす「再帰新星(さいきしんせい)」と呼ばれる連星系天体だ。英語では「Blaze Star(火炎星)」の異名をとる。
かんむり座T星はどこにある?
かんむり座T星は、かんむり座という星座の中の星だ。普段は10等級と暗く、肉眼では見えない。次の新星爆発は2025年中に起こる可能性がほぼ確実視されており、爆発すればおそらく北極星と同じ2等級まで明るくなるとみられる。かんむり座は、うしかい座とヘルクレス座の間にあり、7つの星が半円形に弧を描いている。新星爆発に備えて、まずはかんむり座の見つけ方に慣れておきたい。
午前3時ごろに外に出て、北東の空に北斗七星を探そう。「ひしゃくの柄」のカーブをそのまま伸ばしていくと、明るく光る星に出会う。うしかい座の一等星アルクトゥルス(アークトゥルス)だ。そこから左下へ北東の地平線をめがけてたどっていけば、小さいながらもはっきり三日月状に並んだかんむり座の星たちが見つかるはずだ。
かんむり座T星はいつ爆発する?
天文学者たちは、かんむり座T星が2024年4月から9月の間に爆発すると予測していた。この予測は、10年間にわたって徐々に明るさを増してきたかんむり座T星が、2023年に突然暗くなったことから導き出されたものだ。1946年に起きた前回の新星爆発と1866年の前々回の爆発でも、同様の光度変化が予兆となっていた。白色矮星の新星爆発に関する著書のある米ビラノバ大学のエドワード・シオン教授(天体物理学・惑星科学)は、「かんむり座T星の過去の新星爆発では、爆発の前に減光が見られた。今回も減光が観測されている」と述べている。
もっとも、かんむり座T星は太陽系から約3000光年離れているので、地球上に暮らす私たちは「いつ爆発するのか」と論じながら3000年前に起こった爆発の光が届くのを待ち構えていることになる。
かんむり座T星とは
かんむり座T星は、赤色巨星と白色矮星という、恒星の進化過程においてまったく異なる段階にある2つの天体からなる連星系である。赤色巨星は老化した星で、その一生が終わりに近づくにつれて膨張し、外層の物質を宇宙空間に放出している。一方、エネルギーを使い果たした恒星の残骸である白色矮星は、徐々に冷えていく。この2つの天体の連星系では、赤色巨星が放出する物質が白色矮星の表面に引き寄せられ、降り積もっていく。降着物質が一定量に達すると白色矮星は熱核爆発を起こし、劇的なエネルギーと光の放出が生じる。
これまでの観測記録から、かんむり座T星の新星爆発では約10年かけて少しずつ明るさが増した後、爆発の直前に顕著な光度の低下がみられることがわかっている。2023年に発表された論文で直近10年間の光度の増大が報告され、2024年4月にアメリカ変光星観測者協会(AAVSO)が爆発直前の光度の低下があったと発表した。
かんむり座T星の新星爆発はまれな天文現象だが、熱心な天文ファン以外には、2024年に夜空を彩った日食やオーロラ、彗星ほどの驚きはもたらさないかもしれない。それでも、間近に迫った新星爆発は、夜空を見上げる絶好の口実になるはずだ。
(forbes.com原文)