数百万光年から数十億光年もの時空にわたって広がる宇宙の超空洞(ボイド、宇宙の大規模構造で銀河がほとんど観測されない領域)は、観測可能な宇宙の体積の大半を占めている。実際、天の川銀河(銀河系)は約20億光年にわたるボイドで囲まれていると考えられている。
だが、このボイドの存在そのものが、宇宙論に関する多くの情報をもたらしてくれる可能性もあるのだ。その中には、宇宙膨張を加速させているとされる謎の力、ダークエネルギーの性質や、宇宙の膨張速度を表すハッブル定数の測定値の根本的な不一致、いわゆるハッブルテンションに関する情報などが含まれる。問題なのは、その重要性が広く認識されているわけではないことだ。
だが、プレプリントサーバーArxiv.orgに投稿された論文で、筆頭執筆者の米ユタ大学教授(天文学)のベンジャミン・ブロムリーと共同執筆者の米ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)の天体物理学者マーガレット・ゲラーが詳述しているシミュレーションの結果によれば、ボイドは質量密度が低いにもかかわらず、宇宙の高密度領域の形成に重要な役割を果たしている。
ボイドは初期宇宙で、微小な揺らぎ(密度のランダムな変動)の「谷」の部分として現れたと、ブロムリーは取材に応じた電子メールで語っている。
それでも、ボイドは特定するのが難しい。
その理由は、真空ではなく、明確な境界があるわけでもないからだと、ブロムリーは説明する。ボイドは暗黒の部分として容易に認識できるが、銀河の地図をボイドのカタログに変換するには何らかの判断が必要となり、これが細部に影響する可能性があるという。
だが、ボイドはそれ自体がミニ宇宙だが、孤立して進化するわけではない。
ブロムリーによると、ボイドの性質を測定することで、ボイドが出現する宇宙に関する非常に多くの情報が得られるのは驚きだった。ボイドによって得られる情報を取り入れれば、宇宙のさまざまな謎の解明に重要な役割を演じる可能性があるという。

ボイドは単なる何もない空間ではない。
ボイドは、それ自体の発生の場となった物質の大部分を、周囲のより高密度の構造に提供していると、ブロムリーは指摘する。ボイド内には、銀河や銀河群、ボイド内のボイドを含む宇宙の「ミニ網目(ウェブ)」構造なども存在するという。