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2025.03.02 11:15

25億年前の海は緑だった説 緑色の正体と生物の関係とは

プレスリリースより

プレスリリースより

今から約30億年前、地球の海の酸素濃度が高まると光合成生物が誕生したが、当時の海中は緑の光に満ちていたことを名古屋大学などの研究チームが数値シミュレーションで明らかにした。しかし、緑の光は光合成には適さない。今日のように地球上に多様な生命が繁栄するようになったのは、その緑の光に順応した細菌のお陰だ。

名古屋大学大学院理学研究科の松尾太郎准教授、三輪久美子特任助教授らの研究グループは、京都大学、東北大学、東京科学大学、龍谷大学と共同で「緑の海仮説」を提唱した。地球が誕生してから約5億年後の約40億年前から約25億年前の太古代には、生命の誕生と進化にともない、地球環境も相互的に変化してきた。まだ酸素濃度が低かった当時の海には強い紫外線が降り注いでいたが、海中の鉄分が太陽光によって酸化し、海の中に酸素を放出した。酸素は紫外線や青い光を吸収する。また水は赤い光を吸収するため、残った緑の光が海中に満ちていたということだ。

だが、光合成に欠かせないクロロフィル(葉緑素)という色素は、赤と青の光をよく吸収するものの、緑の光は反射してしまう(だから植物の葉は緑色に見える)。当時誕生したばかりの原核生物(細菌)は、緑色の光に満ちた海の中でどうして繁栄できたかが謎として残った。
大気と水中の酸化還元状態(上)、水中の光環境(中)、光合成生物の進化(下)

大気と水中の酸化還元状態(上)、水中の光環境(中)、光合成生物の進化(下)


研究グループは、緑の光を吸収するピリン色素に着目し、それを光合成に利用したシアノバクテリア(藍藻)が繁栄したという仮説を立てた。光合成生物には、葉緑素が効率的に光を吸収できるようにする光捕集色素(集光アンテナ)があるが、ビリン色素を使い緑の光を吸収するよう発達したシアノバクテリアの集光アンテナの仕組みも解明した。さらに、環境が太古代の海によく似た鹿児島県硫黄島の海域で調査を行ったところ、緑色の光を吸収する光合成生物が多く存在することが確認された。
鹿児島県鹿児島郡三島村の硫黄島(薩摩硫黄島)近海の様子。

鹿児島県鹿児島郡三島村の硫黄島(薩摩硫黄島)沿岸の緑の海。


こうしたシアノバクテリアの活躍で海中の酸素濃度が上昇して飽和状態となり大気中にも溢れ出し、約24億年前には酸素濃度が現在の数パーセントにまで上昇する「大酸化イベント」が発生した。そこで酸素呼吸を行う真核生物が誕生し、その約10億年後にさらに酸素濃度を急上昇させ現在の濃度とした「新原生代酸化イベント」が起き、多細胞生物の誕生が促された。

この「緑の海仮説」は、宇宙における生命においても重要な視点を与えると研究グループは話している。大気が酸化される以前の最初の酸化現象を捉える方法となる可能性があり、惑星の生命の存在を示す指標にもなり得る。NASAの宇宙生命探査計画(HWO)も、緑の海を生命活動の新たな指標として注目しているということだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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