
今回の60Feの年代測定では、250万年前の60Feとは別に650万年前の60Feも見つかった。この年代は、天文学者が「局所バブル(LB)」と呼ぶ半径500光年ほどの高温低密度領域の外側を囲む壁の中を太陽系が通過していた時期と一致する。複数の超新星爆発で形成されたと考えられている泡のような構造のLBの内部は比較的何もない空間だが、外側は恒星の残骸である宇宙塵(固体微粒子)が濃く集まって壁状に分布している。
超新星と地球の生命
超新星と地球の生命との関連が指摘されたのは、今回の研究が初めてではない。2022年に発表された研究では、超新星爆発と地球の複雑な生命の進化との間に顕著な関連性が認められることを示している。この研究では、過去35億年間の超新星の発生頻度と地球の堆積物に埋もれている有機物の割合との間の相関関係を明らかにした上で、超新星爆発が地球の気候や生命の発達に影響を及ぼす可能性があることを示唆している。
2023年に発表された別の研究では、隕石の証拠に基づき、初期の太陽系が46億年前の形成期に近傍で発生した超新星爆発を乗り越えて存続したことを示唆している。強烈な放射線と衝撃波を受けたにもかかわらず、初期太陽系はフィラメント状の分子ガスの「繭」に包まれていたおかげで切り抜けただけでなく、爆発で放出された元素を取り込んだ可能性もある。
超新星の「キルゾーン」
太陽系形成期の最初の10万年間で、超新星爆発がキルゾーン(殺傷能力圏)内で起きた可能性がある。キルゾーンは超新星から約50光年までに及ぶ領域と考えられている。
まさに今、太陽系から50光年の範囲内で超新星が起きたとすると、地球のオゾン層が破壊されるため、太陽紫外線によってあらゆる生物が短期間のうちに絶滅してしまうだろう。超新星爆発が間近に迫っていると考えられている太陽系に最も近い恒星はオリオン座のベテルギウスで、約550光年の距離にある。