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宇宙

2025.04.18 09:15

世界各地の10分前の衛星画像が手に入る、準リアルタイムサービス実現へ

プレスリリースより

プレスリリースより

分解能が46センチメートルという高性能なSAR(合成開口レーダー)衛星をこれまでに8基軌道に載せているQPS研究所は、3月にロケット・ラボのロケット・ラボのElectronで打ち上げた9つめのSAR衛星「スサノオ - I」からの初めての試験観測データを公開した。そこには、分解能46センチメートルという高精細なロサンゼルスのディズニーランドや京都の東寺などが映し出されている。

小さな衛星で巨大電波望遠鏡を構築するSAR

SARとは、電波を使って「撮影」を行うレーダーのこと。SAR衛星「スサノオ - I」には直径3.6メートルの大きなパラボラアンテナが搭載されているが、光学望遠鏡と同じく、解像度を高めるにはアンテナの直径を大きくする必要があり、分解能46センチメートルを実現するにはもっと巨大なアンテナが必要になる。

QPS研究所公式ホームページより。
QPS研究所公式ホームページより。

それを人工衛星に積むのは不可能なので、軌道上を移動しながら連続的に撮影を行い、そのデータを合成することで大きなアンテナで撮影したのと同じ結果を得ようというのがSARだ。遠い宇宙を探る電波望遠鏡も、広い範囲にアンテナを多数設置して超巨大なパラボラアンテナを仮想的に構築しているが、原理はそれと同じ。

分解能46センチメートルとはどれほどかと言えば、QPS研究所のSAR衛星の高度が500〜600キロメートルなので、東京から岡山市民球場の駐車場にどれだけ車が停められているかが見える程度だ。電波の映像なので可視光の写真とは見え方が少し違うが、数値的にはこれだけのスペックとなる。

SAR衛星コンステレーションで変わる社会

「スサノオ - I」の本名は100kg台高精細小型SAR衛星「QPS-SAR」という。撮影モードは、衛星の移動にあわせて撮影領域も移動する「ストリップマップ」と、1点を狙い続ける「スポットライト」とがある。分解能46センチメートルなのはスポットライトのほう。今回公開されたロサンゼルスや京都はスポットライトモードだ。

京都の東寺。五重塔がはっきりわかる。
京都の東寺。五重塔がはっきりわかる。

可視光線を使うカメラで地表を撮影しようとすると、どうしても雲に隠れてしまう場所があるが、電波なら雲を透かして見える。また太陽の光も影響しないので、昼でも夜でも変わらない高精細な画像が得られる。そのため、台風や火山の噴火などの災害時には、雲や噴煙に邪魔されることなく地表の様子を即座に正確に把握できる。

カリフォルニア州アナハイムの中心地区。トップの写真はディズニーランドを拡大したところ。
カリフォルニア州アナハイムの中心地区。トップの写真はディズニーランドを拡大したところ。

また畑の作物の状態をAIで解析して農作物の価格を正確に予測したり、連続撮影を行うので人や家畜や船舶などの移動の様子もわかるなど活用の幅は非常に広い。経済活動にも大いに貢献するという。

同社はさらに「QPS-SAR」を打ち上げて、最終的には36基からなるコンステレーションを構築する計画だ。今回は打ち上げから1カ月もかからずに最初の画像の送信に成功したということで、打ち上げペースは加速化されるだろう。コンステレーションが完成すれば、地球上のほぼあらゆる地域の画像が注文してから約10分で届く「準リアルタイムサービス」が実現するということだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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