「急がば回れ」で、まずはルール作りから。 経験に学ぶ自律運転企業のベテラン起業家

フォーテリックスの共同創業者たち。左からジブ・ビンヤミニCEO、ヨアヴ・ホランダーCTO、ギル・アミドCRAO。 Courtesy of Foretellix

チャットボット「ChatGPT」などの生成AI(人工知能)が世界を席巻している。それと比べ、無人タクシー(ロボタクシー)に代表される自律運転関連の話題は落ち着いた感がある。だが、「自律運転の進化は停滞していない。それどころかシステムが改善され、どんどん良くなっている」と、イスラエル発の自律運転技術開発スタートアップ「Foretellix(フォーテリックス)」の共同創業者兼CEOジブ・ビンヤミニは語る。

半導体業界出身のベテラン起業家らが2018年に創業したフォーテリックスは、半導体業界ですでに導入されている手法をもとに、AIを搭載した車両シミュレーション技術を用いて、AD/ADAS(自動運転・先進運転支援システム)の安全性テストのための仮想プラットフォームを開発。自動運転車の安全性の検証と妥当性確認(V&V)の改良を目指している。顧客には、ボルボ・グループや、メルセデス・ベンツ・グループ傘下のダイムラー・トラックといった大手自動車メーカー、デンソーなどのTier1企業(メーカーに部品やシステムを直接納品する企業)を抱えている。

「技術の進化がスピードダウンしているように見えるとすれば、それは2018年〜19年頃にあまりに多くの時期尚早な“約束”があったからです。一部の企業が非現実的なほどに高い期待値を設定してしまい、結局、それを達成できなかった。だから人々は落胆し、『今さら実現するわけない』と悲観的になってしまっているのです」(ビンヤミニ)

そうした状況に反して、業界内の期待値は着実に高まっている。ビンヤミニ率いるフォーテリックスは2023年12月5日、8500万ドルのシリーズC資金調達ラウンドの終了を発表。同年5月に参加した半導体大手NVIDIAや、トヨタ傘下のグローバル投資ファンドであるウーブン・キャピタル、前出の自動車大手ボルボ・グループ、米保険大手ネイションワイドなどに加え、新たにいすゞ自動車と、シンガポール政府の投資機関テマセクが出資を決めている。
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文 = 井関庸介

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