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2023.12.19 08:00

「急がば回れ」で、まずはルール作りから。 経験に学ぶ自律運転企業のベテラン起業家

フォーテリックスの共同創業者たち。左からジブ・ビンヤミニCEO、ヨアヴ・ホランダーCTO、ギル・アミドCRAO。 Courtesy of Foretellix

そこで、起業後すぐに業界規格の策定でイニシアチブを取ることを決断。創業者の一人、ギル・アミドがCRAOとして積極的に規格団体や関連企業に規格づくりへの働きかけを行った。一般的に、創業初期のスタートアップは資本や人材などのリソースに限りがあるため、新規顧客の獲得と、市場の拡大による成長を優先する。ところが、フォーテリックスは規格づくりにも同様のエネルギーを割いた。「市場での先発者としての優位性があり、技術力やベンダーで業界リーダーであっても、規格面でグローバル・スタンダードでなければ、最終的には負ける可能性があるのです。そうしたこともあって、規格をめぐって多くの投資をしました」とビンヤミニは話す。
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もちろん、それで成功が保証されたわけではない。それでも、長期的な戦略を立てやすくなるのは確かだ。彼の言葉を借りれば、これは「長期的な投資」なのである。イスラエルでは、やはり半導体企業バレンスも業務用通信規格の領域で業界規格を打ち立てる一方、情報を積極的に開示し、業界リーダーを目指している。

既存のルールでは新しいテクノロジーに対応できないことがある。そこでスタートアップは自ら業界標準を目指すと同時に、当局や関連企業に働きかけて規格・規制づくりに協力している。入れ替わりが激しい次世代テクノロジーの世界では、多くのスタートアップがイノベーターと教育者、イノベーターと規制当局の両方の役割を受け入れ、関係者全員による包括的アプローチで業界の成長を育みながら、その中で勝ち残りを目指しているのだ。
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こうした経営戦略を立て、それを辛抱強く実行することを可能にしたのがフォーテリックス創業者たちの経験だ。彼らは近年の起業家に多く見られる20〜30代の若者ではない。ビンヤミニは、「自分たちを年寄りではなく、成熟し、人生経験が豊富な起業家だと思いたいですね」と笑う。実際、その経験にもとづくリーダーシップとコミュニケーション・スキルが、最先端のテクノロジー領域にありながら、異業種の大企業顧客との円滑な協力関係を可能にしている。

「半導体と自動車はまったく別の産業です。しかし、パートナー企業と緊密に協力し、顧客のビジネスモデルを尊重するという基本的な哲学は、さまざまな苦労をしながら学んだものです。成功や失敗から得た知見は業種に関係なく、生かすことができます」。ビンヤミニはそう語る。
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フォーテリックスが選んだルートは、効率性がウリの一つである自律運転企業らしかぬ、遠回りに見えるかもしれない。だが、「急がば回れ」という言葉もある。ベテラン起業家らは「経験」という、私たちを人間たらしめる特質でテクノロジーを進化させ、社会をさらに安全で便利にしようとしている。

文 = 井関庸介

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